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抱き締められて、背中をぽんぽんと撫でられて、宥められる。
漸く泣き止むと、頬を覆っていた本宮くんの手のひらがそっと動いて。
親指が、ツーっと僕の唇をなぞる。
あっ…と思ったときには、本宮くんの整った顔が近付いてきて。
心臓が破裂するんじゃないかってくらいにバクバクと鳴って。
唇と唇が合わさる直前に………
prrrprrrprrr…prrrprrrprrr…
お時間終了10分前の電話が鳴った。
僕の肩に額をつけて、ガクリと本宮くんが項垂れる。
「あー、もー!!」
悶える本宮くんが、ちょっと可愛い。
普段は大人びてるのにこう言う時は年相応で、“ギャップ萌え”って、これを言うんだろうか。
笑っちゃ悪いとは思ったけど、どうしても堪えきれなくて。
電話に出る彼の背中を見詰めながら、ふふふっと声が漏れる。
「なに笑ってるんですか?」
漏れた笑いが聞こえていたらしい。
受話器を置いて振り向いた彼が、口を尖らせる。
その様子が、やっぱり可愛くて。
「ごめんごめん」
微笑んで謝るが、やっぱり本宮くんはちょっと拗ねてて。
「あーあ、カッコ悪ぃ。
てか、ここのカラオケボックス、もう来られないですねぇ。
監視カメラに映ってんだろうなぁ」
ニヤリと意地の悪い笑みで、本宮くんが僕を見てくる。
え?監視カメラ?
そっか、こういうとこって、カメラがあるのか。
耳まで赤くなるのを感じながら、狼狽える。
「どうしよう…」
羞恥に涙ぐむと、本宮くんがさっきの仕返しのように笑ってて。
「ま、俺は見られてもいいんですけどね。
ほら、キスしましょっか?」
そう言ってカメラを指差すから、全力で抵抗した。
もう、受付にすら行けなくて、本宮くんが会計をしている間、そそくさと一人外に避難する。
後から来た本宮くんは、笑いすぎて涙が滲んでて。
ホント、こう言うとこ子供なんだから。
でもやっぱり、そんなところも好きで。
「あー、ヤバい。
家教のバイト行きたくないー。
将吾さんといちゃいちゃしてたいー!」
恥ずかしげもなく言われて、嬉しいような、恥ずかしすぎて辛いような。
僕だって離れたくはないけれど、これ以上恥ずかしさに堪えられない。
「もー、そう言うこと言わないの!
ほら、遅れちゃうよ?」
照れ隠しにキツく言うと、じーっと見られて。
「そんなこと言ってていいのかなぁー?
今日の家教先、高2の女の子なんだけど。
三つ年下。
スタイルもかなりいいし、美人」
そんな事言われて。
「でも、本宮くんは僕“が”いいんでしょ?」
さっきの言葉を借りてそう返すと、本宮くんが満面の笑みを見せてくれて。
「うん、そう、将吾さん“が”いいの」
ご主人様に誉めてもらうのを待つ大型犬のように、キラキラした瞳で見詰められる。
やっぱり、本宮くんのほうが何枚も上手だ。
「あー、もー、ほら!
ホントに時間ないってば!」
真っ赤な顔で怒ると、本宮くんはやっぱり笑ってて。
「はぁい。
じゃあ、夜にまた連絡しますね」
そう言って小走りで去っていく彼の背中を、未だ夢見心地で見つめ続けた。
あれ?
ところで、さっき、本宮くんは「あの人よりも幸せにする」とか言ってなかっただろうか。
“あの人”って、誰だろう。
頭を捻るが、全く心当たりもない。
きっと、気が動転してて、聞き間違えたのだろう。
小さく湧いた疑問をさらりと流し、浮き足だった気持ちのまま帰路についた。
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