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29 ある男の思惑4
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翌朝、二日酔い一歩手前の頭で漸く目覚めると、早速出掛ける支度を整える。
風間はずっとぶつぶつ文句を言っているが、古い付き合いだ、こう言うときの俺は誰が何を言おうが引かないと諦めてはいるようだ。
証拠に、文句を言いつつも出掛ける支度は一応進めている。
カフェに着いて、何よりも“本宮くん”が美形過ぎて驚いた。
いや、コイツ、マジで一般人かよ。
全体的にモデルみたいなチャラチャラしたイケメンの店員が多いが、よく見ると殆どが雰囲気イケメンってヤツで。
なのに、風間の片想いの相手は、どう見てもオーラが違った。
決してチャラチャラしてるわけではないのだが、一際目を惹く男だ。
遠目から見て、これは確かに風間なんかは相手にされないだろうと分かる。
コイツ、どんだけ高望みしてんだよ?
が、それは俺の思い違いだったようだ。
俺と風間を見た本宮くんが、敵意むき出しで俺を睨み付ける。
辛うじて接客用の笑顔を貼り付けてはいるが、どう見たって目が笑っていない。
なのに、風間の想いには応えていないなんて。
これは、無自覚なんだろうか?
しゃあない。
ここはちょっと、揺さぶってみるか。
わざと風間と親しげな様子を見せ付ける。
気付けよ、イケメンくん。
じゃないと、後悔するぞ?
「お~い、ミヤくん」
バイト終わりの本宮くんを待ち伏せし、わざと馴れ馴れしく呼び止める。
「何でしょうか?」
本宮くんは整った顔を歪め、嫌悪感を隠す様子も無く俺を見下ろした。
それにしても、足長ぇな。
なんだよ、私服のセンスもいいとか、ズルいだろ。
嫌みなほどのルックスの良さにおどろきながらも、余裕の笑みだけは崩さない。
「突然、ごめんね~。
ミヤくんはさぁ、将吾のことどう思ってるの?」
またわざと“将吾”とか呼んでみる。
やっぱり、こいつの反応、良いねぇ。
敵意むき出し。
勘違いとはいえ、俺みたいな一般人がこんなイケメンのライバルになる機会はもう二度と無いだろう。
ちょっと、優越感。
「どういう…、意味でしょうか…?」
漸く口を開いた彼に、更に発破をかける。
「そのままの意味だよ。
将吾を何とも思ってないなら、弄ぶのはやめてくれないかな?
実は、今度こっちに転勤になるかもしれなくてね。
今回の出張は下見と挨拶も兼ねているんだ。
せっかくだから、久々に将吾に会いに来たら、変な男と知り合ってるし。
将吾の気持ちを知りながら、弄んでるんだろ?
その気がないなら、やめてくれないかな?
将吾は俺が大切にするからさ」
口から出任せで煽ると、やはり彼はかなり苛立ったようだ。
気付けよ。
そして乗り越えろ。
大事な親友を男に託すんだ。
生半可な気持ちで手を出されたらそれはそれで困る。
“他の男には譲らない”ってくらいの気持ちでいてくれねぇと。
これで諦めたり、いざこざを面倒がって逃げるくらいなら、最初から手なんて出してほしくはない。
「あなたに教える必要は、無いと思いますが?」
若い、ギラギラした、オスの顔。
「将吾が君を好きだと言ったのは、半年も前の事なんだろ?」
「………」
更に煽ると、無言のままジッと睨まれる。
「まあ、いいや。
君がどうしようが、俺は俺のしたいようにするだけだから。
君もせいぜい頑張りなよ」
最後にもうひと押しして、くるりと背を向ける。
風間、よかったじゃん。
コイツは確実に、お前に独占欲を抱いてるよ。
背後に立つ風間の未来の彼氏にヒラヒラと手を振りながら、駅へと向かって歩いた。
なんだか、親友を取られたようで少しだけ寂しい。
娘を嫁に出す親父の気分って、こんな感じだろうか。
無性に、家で待つ彼女に会いたくなって、普段は連絡なんて適当なのに、“今から帰る”とLINEを送った。
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