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「ねえ、将吾さん。
今度は、俺の話聞いてくれますか?」
本宮くんの甘い声が、耳を擽る。
「うん、聞かせて?」
あんなに不安で怖かったのに、誤解が解けた今、彼の言葉は、優しく心に入ってきて、素直に頷いた。
「さっきも言ったけど、キスできなくなったり、部屋に呼べなくなったのは、我慢が効かなくなってたから。
ここまでは分かってもらえました?」
「うん」
「多分ね、将吾さんは俺の事少し誤解してる」
突然の言葉に、身体がビクリと跳ねる。
消え去ったはずの不安が、一気に押し寄せてきて。
「…誤解…って…?」
声が震えるのが、自分でも分かった。
「俺ね、よく“年の割りに大人っぽい”とか“飄々としてる”とか言われるんです。
でもね、実際は年相応にガキだし、ホントは将吾さんに甘えたいんです。
嫌われたくなくてカッコつけてるだけ。
将吾さんは、先に“好き”って言ってくれたから自分の方が好きとか思ってるかも知れませんけど、俺もめちゃくちゃ将吾さんの事好きですよ。
あんまり言い過ぎてウザがられたくないから、我慢してるだけ」
本宮くんの語る“誤解”の内容に、驚いた。
彼は、僕からの告白に流されてくれた部分がどこかにあると思っていたから。
“好き”という言葉も、すぐにネガティブ思考に陥る僕のために言ってくれているものだと思っていたから。
「本宮くん…?」
嬉しすぎる現実に付いていけなくて、意味もなくポツリと彼を呼ぶ。
「幻滅…しちゃいました…?」
情けなく眉を下げた本宮くんが、不安げに問い掛けてきた。
そんなわけない。
幻滅なんてしない。
寧ろ、そんな本宮くんの様子が、愛しくて、可愛くて。
「ううん、嬉しい。
ギュッてしても、いい?」
普段なら恥ずかしくて言えないけれど、自然とそんな言葉が漏れる。
「勿論」
そう答えた彼は、少しはにかんだ笑みで頷いてくれた。
本宮くんの頭を胸元に引き寄せて、抱き締める。
広い背中に手を回すと、そこは汗ばんでいて。
そういえば、風邪が酷かったんだと思い、慌てて拘束を緩める。
「ごめん!
本宮くん風邪引いてるのに、長話させちゃって。
もう大丈夫だから、ベッドにいこう?」
汗で額に張り付いた前髪をそっと掻き上げる。
「やだ。もう少しこうしてたい。
甘えてもいいんでしょ?」
子供っぽい口調でそう言って、僕の鎖骨辺りに鼻梁を埋めて、スリスリとまるでマーキングのような仕草をする。
背中に回された手から、じんわりと彼の温もりが伝わる。
こうして甘えられるのは、擽ったい気持ちにもなるが、やはりひたすらに嬉しくて。
大型犬を甘やかすかのように抱き締めると、胸元から「大好き」と呟きが聞こえた。
どれくらい、そうしていただろう。
ふと思い出して、この際だからと疑問を口にする。
「本宮くん、この間桐島さんに、本宮部長に“絶対に言うな”って言ってたのは?」
ちょっと意地悪な質問かもしれないけれど、もう、本宮くんに不安を隠すのは嫌だったから。
「あー、あれは…。
ウチのオヤジって、悪戯好きなんですよね…」
本宮くんが、気まずそうに口ごもる。
「悪戯…?」
「すぐ俺で遊ぶんです。
きっと将吾さんとの事知ったら、喜んで休憩中とか総務に行きますよ。
で、俺の知らない会社での将吾さんを一々報告して俺に焼き餅焼かせて楽しむの、目に見えてますもん」
イマイチ真意が掴めずに首をかしげると、本宮くんはバツが悪そうに答えてくれた。
「なんだ、そう言うことか…」
勇気を出して真相を聞けば、結局は心配することなんて何もなくて。
「それにね、将吾さんの事を伝えるときは、久弥経由じゃなくて、ちゃんと自分で紹介したいから」
そう付け足した本宮くんは、先程とは打って変わって、頼もしく精悍な眼差しで僕を見詰めてくれた。
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