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15 閑話 やなぎとひさや
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【13 直後】
「本宮くんって、桐島さんに僕の事なんて話してるの?」
「え?久弥に?
大したこと話してないですけど、何か言われました?」
「『よかったね』って…」
「あー、あいつ勘良いから、将吾さんの幸せそうな顔見て何か気付いたのかな?」
「え…?僕のせい…?」
ショックを隠しきれずに、風間がポツリと呟いた。
―――
――――――
―――――――――
3ヶ月ほど前。
その日、柳は大学の講義の合間に、実家に荷物を取りに来ていた。
引っ越しは急だったし、独り暮らし用の狭いアパートに全ては持っていけずに、季節ものなどはちょくちょく取りに来るつもりでいて、その時も置きっぱなしの服などを取りに来ていた。
本宮は仕事に出ていたが、桐島は有給消化だとかで家に居て、ちょうど昼時だったので一緒にご飯を食べていたのだが……。
「柳、お前気持ち悪い」
「ちょっ!?久弥、流石に酷くねぇ?」
「だって、スマホ見ながらデレデレし過ぎ。
樹さんと同じ顔で変な顔すんなよ、気持ち悪い」
「2回も“気持ち悪い”言うな!
つーか、久弥といるときのオヤジも結構キモいけど」
「今まで彼女出来てもそんな顔したことないだろ。
よっぽどいい女の子か?」
「俺の言葉はスルー?
まぁ、いいや。
当たらずとも遠からず。
ついこの間彼氏出来たんだけどさぁ、すっげぇ可愛いの。
ちょっとネガティブでさあ、年上なのに守ってあげたくなる感じ?」
「はぁ!?
お前、男と付き合ってんの?」
「ん。
オヤジの事もあるし、偏見はないつもりだったけど、まさか自分が男に惚れるとはねー。
もともとバイの素質はあったのかも。
てか、久弥の方こそ、ノンケだろ」
「まー、そうだけど」
「ヤバイ、将吾さんの話してたら会いたくなってきた」
「なんつーか、重症だな…」
「何とでも言え。
久弥にキモがられようと、痛くも痒くもない。
将吾さんが“好き”って言ってくれれば十分」
「うわー…」
「あ、オヤジには言うなよ?
ぜってー面白がって見せろとか言ってくるから」
「あー、はいはい」
「ごちそうさまでした。
んじゃ、またそのうち来るわ」
「おー、その“しょうごさん”ってのも連れてこいよ」
「ヤだよ、勿体ない」
「ハハッ、本当ベタ惚れなんだ?」
「ああ。
まあ、そのうち機会があったらな」
こんな柳のノロケなど知る由もない風間は、休憩中にくしゃみが止まらず周囲に心配されたらしい。
―――――――――
――――――
―――
そして、今。
「珍しいな、柳がオレに相談なんて」
「最近、将吾さんが可愛すぎてヤバイ…」
「お前、相談あるとか言って人の事呼び出して、何かと思ったらただのノロケかよ?」
「ノロケじゃねぇよ。
マジで可愛い過ぎて困ってんだって…」
「じゃあ、オレなんか呼び出してないでさっさとヤることヤってこい」
「久弥、お前俺の気持ち読むのやめろって…」
「柳が分かりやすすぎるだけだろ。
何? 誤解解けたんじゃないの?」
「誤解は解けた。
けど、将吾さんが辛そうにしてんの見ると、最後まで出来ない…。
どーしたらいいかわかんなくなる。」
「童貞かよ…?」
「憐れんだ目で見るなよ。
つーか、童貞捨てた時の方が緊張しなかった」
「まー、風間くんってあんまり免疫無さそうだしなぁ。
でも、真面目に相談に乗るとさ、風間くんも待ってんじゃないの?
風間くんの性格からして、自分からヤりたいとか言えないだろうし。
最初はやっぱ、怖いだろうし。
お前から一歩踏み出してやれよ」
「やっぱり、痛かった…?」
「そりゃ、漫画とかAVじゃないんだから、少なからずは。
でも、お前らなら大丈夫だろ。
風間くんだって、多少無理してでもお前とシタイって思ってくれてると思うけどねー」
「久弥、他人事だと思って完璧に愉しんでるだろ?」
「愉しんでるわけじゃなくて、客観視してんの。
当事者だと、どうしても主観が入るからなー。
尻込みする気持ちもわかるけど、風間くんのこと信じてやれよ?
お前のカッコ悪い所なんて、今更見られたって嫌われないって」
「だといいけど…」
「んじゃ、お前は風間くんが気持ちよくしてくれなかったら嫌いになんの?」
「んなわけねーだろ!?」
「だろ?
風間くんもきっと同じだよ。
さて、そろそろ樹さん駅まで迎えに行かないと」
「あー、出張今日までだっけ?」
「そー。だからお子様には構ってらんないの。
これからは大人の時間」
「うぜぇ」
「悔しかったら腹括れ」
ニヤリと余裕の笑みを見せて、桐島が立ち上がる。
一人取り残された柳は、気合いを入れるようにパチンと自らの両頬を叩いた。
「腹、括るか」
ポツリと呟いた独り言は何かを決意したような響きで。
フッと湛えた笑みは、清々しさを感じさせた。
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