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「将吾さん、過去は変えられないけど、今の俺は将吾さんしか見てませんから」
「うん、ありがとう」
感極まって涙ぐむと、本宮くんがそれをそっと拭ってくれる。
「将吾さん、大好き。
愛してます」
いつも以上に甘い声音で告げてくるから、やっぱり恥ずかしくなって顔を俯けてしまう。
「将吾さん、もう意地悪しませんから、こっち向いて?
起き上がれます?シャワー浴びましょう?」
言われて、昨日はあのあとすぐに眠りに堕ちてしまったことを思い出す。
下着を着けているってことは、僕が寝ている間に…。
いたたまれなさに、余計に顔なんて上げられなくなる。
「今度…頑張るから…今日はもう、無理…」
これ以上恥ずかしいことは、もう心臓がもたないと訴える。
「わかりました。
今日はバイトも行かなきゃいけないし。
キスもしてもらったし、あんまり一気にし過ぎると将吾さんホントに顔見せてくれなくなりそうだから、我慢します。
また今度、時間あるとき一緒にお風呂入りましょうね」
からかうような内容なのに、その口調も微笑みも、幸せで仕方がないと言っているようで、こちらの方が恥ずかしくなる。
「もー、早くしないと時間なくなるよ!」
言葉とは裏腹に僕を抱き締め続ける本宮くんの胸をグイッと押してそう言うと、漸く拘束が解かれる。
自分で言ったことだし、時間も時間なのだから仕方ないが、それまで全身で感じていた温もりが消えて、少し寂しさを感じた。
本宮くんのシャワーの音を聞きながら、彼の枕を抱き締める。
大好きな本宮くんの香りを胸一杯に吸い込むと、身体の中まで本宮くんに満たされたような錯覚に陥った。
安心感と昨夜の疲れのせいか、少しウトウトしていたらしい。
唇に何かが触れる感触に目覚めると、目の前には本宮くんのアップ。
ということは、今僕の唇に触れたのは…?
「ふぇ…!?」
思わず間抜けな声を出すと、本宮くんはクスクスと笑っていて。
「枕よりも、本物に抱きついてくださいよ」
からかう本宮くんの言葉にハッと覚醒し、腕の中を見る。
どうやら僕は、彼の枕を抱き締めたまま、あまりの心地よさに二度寝していたらしい。
「これは、違っ…!」
慌てて枕を放して言い訳しようとすると、そっと身体を抱き起こされる。
昨日の名残に軋む僕の身体を労るように優しく、けれども有無を言わさぬ力強さをもって、本宮くんが僕を抱き締める。
「違わないでしょ?」
「うん…。
本宮くんのにおい、好き…だから…」
先程失言してしまったせいもあり、素直に認めると、本宮くんはやっぱり笑っていて。
「においだけ?
俺はいらないの?」
またそんな意地悪を言ってくる。
「違う。
本宮くんが好き」
呟いてギュッと抱きつく。
胸元に顔を擦り寄せると、本宮くんの香りが全身を包む。
やっぱり、本物の本宮くんは枕の何倍もいいにおいがして、昨日本宮くんを受け入れた場所が、キュンと疼いた。
そんなはしたなさに気付かれたくなくて、平静を装おうとするのに、そんな僕の事情など知る由もない本宮くんは、より一層力強く僕を抱き締めて。
「将吾さん、ホント可愛い!
俺も大好きです。
バイト終わらせてソッコー帰ってくるから、待っててくださいね。
後でまたイチャイチャしましょ」
マンガとかだったら語尾にハートや音符でも付きそうな調子でそんなことを言われる。
「本宮くんって、ホント恥ずかしいよね…」
そんな恨み言にも彼はめげない。
「“慣れてください”って、言ったでしょ?
今日はおまけで行ってきますのキスは俺がしますけど、今度は将吾さんがしてくださいね」
訳のわからない約束を一方的に決められ、ホントにチュッとキスされる。
軽く触れてリップ音を立てて離れて行った唇を無意識に目で追う。
整った顔に、凛々しい口元。
この唇に、昨日は…。
また邪なことを考えてしまって、妄想を振り払うように頭を振ると、本宮くんにクスリと笑われしまった。
「じゃあ、行ってきますね」
「うん、行ってらっしゃい」
玄関まで送ろうとする僕を、まだ辛いだろうからと制して、ベッドに座ったままの僕に本宮くんが背を向ける。
こんなに満たされた気持ちで彼の背中を見送る日がくるなんて、夢にも思わなかった。
始めは振り向いてくれるなんて、思ってもみなかった。
振り向いてもらえなくても、見てるだけで良かった。
どんどん欲が出て、振り向いて欲しくて、醜い感情に支配されて。
それでも君は、僕に振り向いてくれた。
僕を、抱き締めてくれた。
こんな平凡で、何の取り柄もない僕を。
きっと彼は数時間後にまたあの満面の笑みでここに帰ってくるのだろう。
その時は、たまには僕から、大好きだよって伝えようかな。
まずは手始めに、いつも返信するばかりのメールを僕の方から送る。
普段は、本宮くんからの連絡を待つばかりだけれど、僕だって彼を求めているのだと伝えるために。
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to:本宮柳
title:大好きです
本文:バイト頑張ってね。
ちゃんと待ってるから、気をつけて帰ってきてください。
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だって、君は僕に振り向いてくれたのだから。
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