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デート 3 side 本宮柳
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「電車じゃないの?」
駅には向かわずに近くのコインパーキングを目指すと、将吾さんがキョトンと問い掛けてくる。
「電車もいいんですけどね、こっちの方が二人になれるでしょ?」
「……っ!
また、そう言うこと……」
すぐに耳まで赤くなって、俯く。
こういう反応が俺を調子に乗らせているとは、自覚していないのだろう。
「俺は、電車の中で手繋いでもいいんですけどね」
フフっと微笑みながら、車のロックを解除して助手席の扉を開ける。
当たり前と言えば当たり前なんだろうが、将吾さんはエスコートされるのには慣れていないらしい。
恥ずかしくて仕方がないといった様子で、ぎこちなく車に乗り込んだ。
運転席に座れば、当然将吾さんが隣に並ぶ。
ご飯を食べるときなんかは向かい合うことが多いから、新鮮だ。
チラリと隣に眼を向ける。
所在なさげに、けれどキョロキョロするのも憚られたのだろう、意味もなくダッシュボードを見詰める様子が可愛くて。
「将吾さん…」
そっと名前を呼ぶと、ポヤンとした顔がこちらを向いた。
「なに…?」
開きかけた唇を、そっと塞ぐ。
初めてのデートなのに、まだ会って数分なのに、これ以上はダメだ。
名残惜しいけれど、触れただけの唇をゆっくりと離した。
「取り敢えず、移動しますか。
あっちに着いた頃には、ちょうどお昼時ですから、何か食べてから水族館行きましょ?」
「あ、うん…」
初めから、怖がらせてしまっただろうか。
それとも、軽いヤツだと思われたか。
将吾さんの微妙な反応に、すでに後悔した。
自分はもう少し立ち回りの上手い方だと思っていたのだが、そんなのは本当の恋愛を知らなかっただけだ。
現に、今だって将吾さんが何を思っているか、全く掴めない。
気まずさを誤魔化すようにエンジンをかける。
アクセルを踏めば、当然景色が流れていって。
将吾さんとこんな時間を過ごすことが出来るなんて、なんとも不思議な心地がする。
「本宮くん、運転できるんだね」
沈黙に堪えきれなかったのか、将吾さんが話題をふってくれた。
「車はオヤジのですけどね。
周りは免許とらないヤツも多いけど、俺はオヤジの影響で。
ガキの頃から結構移動は車が多かったんで、自然に。
将吾さんは、運転はしないんですか?
休みの日にドライブとか」
将吾さんの気遣いに便乗して、今後のデートの参考に、少しリサーチも入れる。
「車無いし、運転下手だから。
実家が免許ないと不便な所だから、学生の時に一応取ったんだけどね、不器用だし、向いてないみたい。
帰省したときに、買い物で母親の軽自動車乗るくらい。
父親のセダンは怖いから乗らない」
バツが悪そうに答えてくれる将吾さんが、可愛い。
あー、何でオヤジの車なんだろ。
俺のだったら、運転してもらって教えるついでに…ちょっと…、いや、触っちゃダメだろう。
邪な考えを振り払い、話を続ける。
「じゃあ、移動は電車かバス?
休みの日はどんなとこ行くんですか?」
「んー、あんまり出掛けないかも。
出不精だから、本読んだりテレビ見たり、のんびりして過ごしちゃうかな」
ちょっと、意外な答えだった。
将吾さんのアパートからバイト先のカフェまではちょっと距離があるのに、ほぼ毎週来てくれていたから、勝手に食べ歩きとかが好きなのかと思ってた。
だったら、今日の遠出はあまり好みで無かっただろうか。
「そうなんですね…」
中途半端に相槌を打ちながら、チラリと横目で将吾さんを確認する。
けれど彼は、俺の心配をよそに、ふにゃりと頬を緩めていた。
「うん、一人だとついつい出掛けないで過ごしちゃうから、今日は楽しみにしてたんだ。
水族館とか、久しぶり。
動物園とか水族館とか好きなんだけどね、一人で行くの苦手で。
一人カラオケとか一人焼き肉とかできる人、羨ましいんだよねー」
どうやら、先程の心配は俺の杞憂に終わったようで、まずはほっとする。
「じゃあ、今度は動物園行きましょうか?
焼き肉も。
カラオケも、二回も行ったのに結局歌ってないから、また行きましょ?」
折角だから、次の約束をほのめかす。
こうやって一つずつ、将吾さんとの思い出の場所を増やしたい。
「うん、行きたい。
あ、でもカラオケは…あんま曲とか聞かないし…苦手かも…」
タイミングよく信号待ちで横を見ると、将吾さんはちょっと困って口ごもってて。
それがまた可愛い。
「わかりました、まずは動物園ね」
困った顔も可愛いけれど、やっぱり折角だから笑っていてほしいから。
そう提案すると、将吾さんが「うん」と微笑んで俺を見詰めてくれた。
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