アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ご挨拶 2
-
前に本宮くんが桐島さんに“オヤジには言うなよ”って言ったときは凄く不安だったのに、いざ本宮部長に紹介すると言われてこんなこと言うなんて、我が儘かもしれないけれど、やはり不安は拭えない。
けれど、本宮くんの気持ちは揺らがないようだ。
「将吾さんが会社で気まずいとか言うなら、もう少し我慢します。
男同士だし、カミングアウトが必ずしも正しいと思ってる訳じゃないですから。
ただ、万が一反対されても、俺は別れるつもりはないです。
たしかにまだ学生だし自立してないけど、将吾さんへの気持ちは真剣です」
ぎゅっと手を握られて、真っ直ぐに眼を見詰められて。
不安が全て無くなった訳ではないけれど、少し安心できた。
やっぱり、本宮くんはどこまでも本宮くんだ。
いつでも優しくて、僕のことばっかり考えてくれて。
すぐにネガティブになる僕の背中を押してくれる。
だから僕も、彼の気持ちにはちゃんと応えたい。
「うん、わかった、一緒に行く」
本宮くんといると、こんな僕でも前向きになれるから不思議だ。
“こんな”なんて言ったらまた怒られるから、絶対言えないけれど。
「ありがと。
将吾さんの気が変わらないうちに、オヤジに連絡しちゃいますね」
ちょっと意地悪く笑って、本宮くんがスマホを手にした。
「久しぶり、今電話大丈夫?」
スマホを耳に当ててすぐに、本宮くんが話し出す。
結構深刻な話をするというのに、その口調は砕けてて、緊張など微塵も感じられない。
「今度の土曜の夜、ちょっと時間もらえない?
紹介したい人いるから。
ついでに、卒業後のこととか相談したいんだけど」
『いやいや、“ついで”はそっちじゃないでしょう』と心の中で思わずツッコミを入れてしまう。
けれどもどうやら、本宮部長の関心もそちらではないらしい。
「んー? んー。
いや、彼女じゃなくて彼氏」
まるで“豚肉じゃなくて牛肉”みたいなその軽いテンションは何なんだろう。
僕が考えすぎなのかな。
いや、きっと僕の方が普通だ。
今回は自信ある、本宮くんの方が変。
本宮部長は、どう思っただろう。
そっと見詰めると、本宮くんと目が合った。
僕の不安に気付いたらしい本宮くんに、ぐいっと抱き寄せられる。
「っ…!」
漏れそうになる声を堪えて彼の胸に顔を埋めると、本宮部長の声がスマホから漏れ聞こえた
『へぇー、お前、男と付き合ってんの?
もしかして、今一緒にいる?』
どうして本宮くんの回りって、こうなんだろう。
本宮部長のテンションも“へぇー、お前、牛肉派?”みたいなノリで。
どう考えても、変だ。
「うん、いるよ」
『そっか』
「あ、久弥も時間取れる?」
そうだよね、本宮部長と桐島さんは同棲してるんだし、唯一の共通の知り合いだし。
たぶん、この二人よりも少しは感覚が僕に近いんじゃないかな。
同席してもらった方が僕も心強いかも。
『久弥も?
たぶん平気じゃないか?
ひぃ~、今度の土曜の夜、柳が彼氏連れてくるって言ってるけど、時間取れるだろ?
んー。
大丈夫だって。
せっかくだし、ウチで飯食ってけば?』
きっとすぐ近くに桐島さんもいるのだろう。
トントン拍子に話は進む。
「マジで?
んじゃ、6時くらいに行くわ」
本宮くんが僕の髪を撫でながら言う。
砕けた口調と温かな手に、ちょっと安堵を覚える。
『おー。
彼氏君は苦手な物とかある?』
「好き嫌いないよ。
甘いものも好き」
『わかった、じゃーな』
「んー」
終始その調子で、通話が終わる。
話していたのは本宮くんなのに、僕ばかりハラハラして緊張して、どっと疲れが出た。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
100 / 131