アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
君がいい
-
「ドライヤー、ありがとう。」
「うん、どういたしまして。」
勉強を一時中断して、ベッドに腰掛けている梅村君のもとへと行く。君は俺が近づくのを黙って見ている。
俺は、君に言わなきゃいけないことがある。
「さっきは、ごめんな? あと、俺さ透のこと少し聞いたんだ。」
「え?」
「葉山から聞いたんだよ。」
そう、俺は君の過去を全く知らないわけではないのだ。それは君に伝えておきたかった。
「葉山が、セツに俺のことを話したの?」
「サラっとだから詳しくは知らないけど、話してくれた。」
「そっか。」と君は嬉しそうに笑っている。
「ねえ、セツ。」
「ん?」
俺も、ベッドに腰掛ける。
「葉山が俺の近くに人を寄せ付けなかったことは、もう聞いてる?」
「うん。」
「俺もさ、最初は気づかなかったんだ。徐々に俺と関わりを持とうとする奴らがいなくなるの。原因が葉山だって知ったときは怒ったし、葉山にはすごく謝られたな。」
「うん。」
「それ以降も葉山は、癖で俺の周りの奴に怪しい奴とかいると、絶対に俺と関わりを持たないように仕組んでいた。」
「そうなの?」
「そう。葉山自身が気づいていないみたいだったから、尚更タチが悪い。高校に入っても、中学の頃と同じように友達なんて出来ないまま三年間を過ごすのかなって諦めてしまってたし。でもさ、入学式の日に、セツと出会ってからはずっとセツのことが気になってた。」
頬をすこし赤らめている君。
「セツの後ろの席からずっと、話しかけるチャンスを探っていたんだ。でも、朝はギリギリまで葉山が俺といたし、セツは河崎とずっと一緒にいたから全然話しかけられなかった。」
梅村君も、同じだったのか。俺も、いつか君と話がしてみたかったんだ。
「あの時、セツが水浴びに誘ってくれたとき、凄く嬉しかった。」
「俺も、透が来てくれて嬉しかったよ。」
ふふっと笑う君。
「俺たち、同じように互いを想ってたんだな。可笑しい。」
何かを思い出しているようで、どこか遠くを見ながら幸せそうな顔をする君。俺も、今君が思い出しているであろう”あの時”の記憶を呼び起こす。
キラキラと光る水を浴びる君。
眩しくて、澄んでいて――
「俺、そのあとに勇気を出して葉山に言ったんだ。セツと昼飯を食べたいって。」
回想から一気に現実に引き戻される。
「葉山は渋い顔をさせていたけれど、俺から葉山にそんなことをお願いしたのは初めてだからかな。いいよって言ってくれたんだ。」
俺を見て細まる目。なんでこんなにも君は眩しいのだろうか。
「俺、嬉しくてさ。そして、次第にセツは俺とばかりでなく葉山とも仲良くなっていった。葉山が俺以外の奴に親しげに話してるの見たのなんて初めてだったかもしれない。」
確かに、俺は最初葉山から嫌われていた印象がある。何を話しても冷たくあしらわれたりしていたものだ。
「だからさ、俺、決めたんだ。」
すうっと息を吐いて直ぐにまた空気を取り組む君。
深呼吸が終わったあと、俺の方へ顔を向けて言う。
「セツがいいって。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 36