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紅茶
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「どうして、謝るの?」
俺の腕の中で震えて謝り続ける君。それが不思議でたまらなかった。俺は何もしていないし一緒に寝ていただけなのに、明らかに梅村君はおかしくなっている。
「ごめん。」
「いいよ。いいから、謝らないで。」
ゆっくりと、君の小さな背中をさすってやることしかできない。しばらくはずっとこのままだった。君が元に戻ってくれるのに、相当時間がかかった。
「透。」
「ん?」
「ちょっと冷えてるし、温かいものでも飲む?」
「う、ん」
下を向いて力なく頷く君。俺はすぐ近くにある君のキッチンの方へと向かって、ケトルに水を入れてセットした。ケトルからは水を温めている音が聞こえる。
「あともう少しで沸くけど、コーヒーか紅茶かなんかある?」
「うん、そこの棚の引き出しにティーパックが入ってる。」
ベッドの上で毛布にうずくまり、顔だけ出している梅村君。ぼうっと窓の外を眺めている。君は何を考えているのか。
俺は言われたとおり引き出しの中からティーパックを取り出して、二つのマグカップに入れた。その後に丁度いいタイミングで湧いたお湯をコップの中に注ぐ。部屋の中が、たちまち紅茶のいい匂いで溢れた。
「紅茶って、いい匂いだな。」
いつの間にか、君は窓から視線を移して俺を見て微笑んでいた。俺はベッド近くにあった机に二つのマグカップを置く。
「砂糖いる?」
俺は君が座るベッドの上に腰掛ける。君は毛布から出ている顔を隣に座った俺に向けて口を開く君。
「いらないよ。」
マグカップを手に取り、息を吹きかける。数回熱を冷ますためにフウーとした後に紅茶をちびちびと飲む君。
「落ち着く?」
そう問えば、君は目だけで俺を見た。
「うん、大分。」
紅茶の入ったマグカップを両手で持ちながらそう答えた君を見て思った。
”よかった。いつもの君に会えた”と。
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