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再試結果発表
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「ずるいな。」
若干嗚咽を混じらせた君がぼそりと言った。
「セツはずるい。」
「どうして?」
俺の肩に身を寄せる君に問う。
「そんなこと言われたらさ、俺は何も言い返せなくなるじゃん。」
君が力なく笑い、抱きしめている肩が上下に揺れる。
「透。」
「何?」
「そろそろ、支度しようか?」
俺の目の前に見える君の目覚まし時計が、登校の時間の迫っていることを告げていた。俺は優しく梅村君を離す。涙を零しながら君は「うん。」とだけ言って、洗面所に行った。それを見届けたあと、二つ並んだマグカップを流しに運ぶ。俺の方にはまだ紅茶が残っていたので、一気に飲み干した。
虚しいほどに冷たい紅茶だった。
*
「おはよう、梅村!」
「あ、おはよう増村君!」
今日は昨日の結果発表の日。成績不良者に行われた再試の結果が黒板に貼られる。今ここにいるのは、再試を受けた奴ばかり。梅村君は増村君と楽しそうに話しをしている。俺は、何故か葉山といる。
「おい、葉山。」
「何?」
にこやかな表情。相変わらずチャラく見える黒縁メガネはかけたままだ。
「何? じゃねーよ。なんで再試を受けていないお前がここにいるんだ。」
横目でじろりと葉山を見る。
「おいおい、いいじゃん。見物だよ。」
「面白がってんだろう?」
「バレた?」
笑いを堪えるような顔で俺を見てきた葉山。頭のいい奴にそういうことをされるとムカつく。
「まあ、まあ。それも半分あるけどさ、心配して来たんだよ。」
「は?」
「梅村と、うまくいってる?」
葉山は、前の方で増村君と盛り上がっている梅村君を見つめている。
「何がうまくいってるっていう状態なのか俺には分かんないから、分かんねーな。」
「そっか。」
残念そうな顔をした葉山は、梅村君達の方へと行ってしまった。俺は、ただその場につっ立っていた。
「セツ、来いよ! ここ見やすいよ!」
嬉しそうに俺に手を振る梅村君。俺は君のそばへと足を運ぶ。
結果発表の紙が貼られるまであと僅か。
”ガラガラ”
突然教室の扉を開けたのは、先生達だった。大きな紙を持っている。時間になればその紙が黒板に貼られ、再々試対象者が教室にそのまま居残るというシステムだ。
時計の時を刻む音だけが、教室に鳴り響く。
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