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後期開始
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夏休みは本当にあっという間に過ぎ去ってしまい、学校が始まってしまった。後期に初めて教室に行くと、久々に感じる懐かしい雰囲気。黒板には、新たな座席表が貼られていた。俺は、その座席表の近くへと歩く。
「セツ、おはよう。」
梅村君が俺の方に歩いて来た。
「おはよう、透。座席、どこだった?」
自分の座席を見る前に、梅村君の場所を訊ねた。はっきり言って、君と遠くなるのは嫌だ。
「それがね。窓ぎわじゃなくなったんだよね。」
「そっか。」
「セツはさ、自分の席は確認した?」
「いや、まだだよ。」
「そっか。あそこだよ。」
にこやかに微笑む梅村君が指差したのは、中央の一番後ろの席。
ああ、ということは、もう君が俺の後ろにいることはなくなってしまったのか。
一人悲しみに打ちひしがれていると、梅村君はそのもうひとつ前の席を指差した。
「そして、セツの前の席が俺。」
「え?」
「また近いよ! やったね。」
とびっきりの笑顔でそう言う君。俺も、さっきまで抱いていた悲しみはどこかへと飛んでいった。
「やった!」
二人ではしゃいでいると「邪魔だ。」と言って、誰かが俺の頭をノートで叩いた。急いで振り返ると、そこには河崎が立っていた。
「痛ぇーよ、河崎。てか、てめーの席はどこだったんだよ。」
「は? 分かんないから見に来たんだろうが。」
苛立ってそう言う河崎は迫力があった。
ごもっともです。
俺は急いで河崎に座席表が見えるように体をのけた。
「へえ。」
ニヤリと座席表を見る河崎。
「どうしたの、河崎。」
梅村君もその様子が気になったらしい。
「お前ら、座席の意味って知ってる?」
未だに座席表を見つめたままの河崎がそう言った。
「いや、知らん。」
「俺も、わからないな。河崎は知ってんの?」
「だろうと思った。これ、成績順なんだぜ。」
漸く俺たちを見た河崎。その表情は穏やかだった。
「まさか、お前ら馬鹿二人がこのクラスの中間層に入れたなんて。俺のおかげだな。」
フッとドヤ顔をして微笑む河崎。
「おいおい、ま、そうだな。」
「うん。本当にあの時はありがとうね。」
俺たち二人の言葉を聞いたあと、さり際にこう言った。
「二人共よく頑張ったな。」
ちょっと梅村君と二人でじーんとしたのも束の間、直ぐに「ま、俺はこのクラスの一番をキープしてるけどな。」という嫌味が聞こえてきた。
さっきちょっとでも感じた感動を返して欲しい。
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