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出会い
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俺と若葉さんが出会ったのはこの公園。だが、若葉さんはその前に俺と出会っている時のことをよく話していた。
「君、いつもパンを買ってくれてる子だよね?」
中学一年生の時に、一人で立ち寄った公園。俺はその公園のブランコに一人座っていた。その時に話しかけてきたのが若葉さんだった。彼の名も知らなかったあの時の俺は、恐る恐る声がする方へと顔を向けた。
「あ、俺が誰だかわからないよね?」
若葉さんは目をキョロキョロと泳がせてそう言った。
「え、と……。パン屋さんの、人?」
俺がそう言うと、彼はパアっと明るい表情になる。
通っていた中学校の近くにパン屋さんがあった。俺はそこのパンの味が大好きで、よく通っていたのだ。だから、公園で初めて話しかけてくれた若葉さんのことも見たことあるなと思う程度には知っていた。
「よかった。覚えてくれてたんだ。」
嬉しそうにそう言う彼。当時の俺は”なんだこの人?”程度にしか思わなかった。
「あの、俺に何か用ですか?」
不安気にそう問うと、「ごめんね。」と言って俺の隣のブランコに腰を下ろした。
「この公園を通ってたら、たまたま常連の君がいたから話しかけてみたんだ。」
はにかむ彼。
「はあ……そうですか」
「あのさ、君の名前を教えてくれる?」
「名前?」
「うん。あ、まずは俺から述べるべきか。俺は松岡若葉(まつおか わかば)。」
「えっと、梅村透。」
「透君って言うんだね。俺のことは若葉って呼んで。」
「若葉さん、ですね。分かりました。」
小学生の時には変なお兄さんのせいで傷ついて、人一倍警戒心が強かった俺は、直ぐにブランコから立ち上がる。
「あ、待って。」
若葉さんも急いで立ち上がった。その反動で押しやられたブランコが若葉さんの足めがけて勢いよく戻っていく。
「痛っ!!」
「ぶっ」
痛そうに足をさする若葉さんを見て思わず吹き出してしまった。若葉さんはそんな俺を見て微笑む。
「良かった。笑った。」
俺は一気に警戒が解けた。
「うん。」
さっき乗っていたブランコへ座りなおす。それに合わせるように若葉さんも隣のブランコに座った。
「君とずっと会いたいって思ってた。」
「え?」
ブランコを漕ぎながら若葉さんがそう言った。
「透君さ、いつも幸せそうにパンを買うよね。」
徐々に高くなるブランコ。
「その姿を見るのが、俺の幸せ。」
若葉さんはそう言うと、ブランコから飛び降りた。綺麗に着地したなと思ったのも束の間、じゃりっといわせながらこちらを向いた若葉さん。
俺は驚いた。
「俺と、付き合ってくれる?」
あまりにも真剣な目が、俺を見ていたから。
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