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現実
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俺は、やっぱり最低な人間だ。
俺がセツを好きになったのは、どことなく若葉さんと似ていたからかもしれないし、突然消えた恋人の代わりを探していたからかもしれない。
認めたくない、けれどもどこか否定できない現実が自分自身を追い詰める。
「透君?」
ブランコの前で立ったまま動かない俺を心配した目で見つめる若葉さん。
そんな目で俺を見ないで欲しい。
その優しさで俺を包み込まないで欲しい。
飲まれ混みそうになる何か。自分の身をいつも守ってばかりで、その行動でいろんな人を傷つけてきた。卑怯な人間。
徐々に息苦しくなり、荒くなる息。
「透君? 大丈夫? 顔色悪いよ?」
横に立って、俺の背中を優しくさすってくれる。
「俺、最低だ……」
「え? ちょっ、透君っ!」
ばくばくと心臓がうるさい。
俺は意識を手放した。
*
目を薄らと開くと白い天井があった。横をチラリと見ると、こちらを見つめている若葉さんが隣に座っていた。若葉さんは俺が目覚めたことに気づくと名前を連呼した。
「透君! よかった、透君。本当に、よかった。」
手が固く握られている。
「痛いよ。」
俺は笑いながらその手を見つめた。
「あ、ごめん。嬉しくてつい。」
潤んだ目をこちらに向けている若葉さんに、俺は笑った。
「透君、過呼吸だって。」
しばらくして若葉さんが落ち着きを取り戻したあと、深刻な顔をされた。
「過呼吸、でしたか。」
「うん。ストレスで発動したんじゃないかって医者から言われた。」
俺の横には、元気のない顔があった。
「どうして若葉さんがそんなに落ち込んでいるんですか。」
「だって、ストレスって……明らかに俺のせいだろ?」
「え?」
「透君、俺が再度告白したときものすごく青白くなってた。」
「そんな、なっていましたか。」
「うん。それって俺のせいでしょ?」
俺のせいでしょ、と言われてすぐには否定ができなかった。困ってしまった俺は少ししてから笑ってごまかした。
「違いますよ。」
そう、きっかけが若葉さんでも原因は俺にあるのだ。
どうして俺は、この人と別れたと思ってしまったんだろう。待っていれば良かったのだ。そしたら、こんなことにはならなかった。誰にも迷惑をかけることもなかったのに。
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