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涙
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「俺、伝えていないんです。」
「恋人に何も伝えていないんです。」
苦しくなる胸。
被害者振るなよ、自分が悪いんだよ。
そう言い聞かせて見ても息苦しくなるだけで、何の解決にもならなかった。
若葉さんはごくりと喉を鳴らした。
「透君、大丈夫だよ。」
大丈夫って何がだろう。
「大丈夫。俺が透君には苦しい思いをさせないから。」
どうしたら良いのだろう。
「俺なら、透君の過去も知ってる。だから守ってあげられる。」
けど、俺は一度若葉さんから捨てられてるんだよ? それなのにどうして、信用出来ると思うの?
問いたいことは沢山あった。だが、今それを出したところで何かが変わるわけではないのだ。俺は言葉を呑み込んで若葉さんを睨んだ。
「俺は……俺は、汚い。」
ダメだ。
涙が止まらない。
「汚いのに、それなのに俺を許すの?」
若葉さんは一瞬固まった。感情も何もない表情だった。
「許すよ。俺は君が好きだから。さ、今日は疲れただろうから早く眠りな。明日退院らしいからさ。」
優しくて大きな手が頭を撫でてきた。俺はそれに応えるように目を閉じた。
誰か、俺を受け入れて……
誰かって、誰?
そんなの決まってる……。
君には結局俺の過去を話していないな。でも、もういいんだ。話しても、全てが無くならない。俺の汚れは残ったまま。君に嫌われるくらいなら、俺はまた汚れ続ける。
君とは最初から釣り合わなかったんだよ。
こんな時に限って屈託の無い笑顔とか、陽にあたると茶色くなる髪の毛とか、温もりとか、外で走ってる姿とかが俺の頭の中で浮かんでいく。
ああ、綺麗だな。
それに比べて俺は、セツを騙していたんだ。セツと一緒にいると、自分も無邪気で純粋になれた気がした。でもそれは、ただの勘違い。
セツと、離れよう。
ごめんね、セツ。
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