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anxiety<side A>
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母校に久しぶりに足を踏み入れて、ある人を探す。
…いた。
気だるそうな雰囲気、黒髪の猫っ毛。
背は高い方なのに華奢な体つき。
「槙乃」
背後から声をかける。
振り返る君。
ーーあぁ、また痩せたかな。
なんて思う。
「痩せた?」
「ううん、痩せてない」
なんて、俯いて首に手をやりながら目を見て話さないのは、嘘をついている時。
「嘔吐は?過呼吸は?」
「大丈夫」
まだ、君は俯く。
そんな君の腕を引っ張り、この暑い日に着ている長袖のジャージをまくる。
「っ、」
君は綺麗で大きな瞳を更に大きくする。
大方私の行動に驚いたのだろう。
「これ、また腕に爪たてたの?」
これを見られてはもう嘘をつけないと思ったのだろう、君はうなづく。
それを確認してから腕を離してジャージを元に戻す。
「私には嘘つかないで」
「…うん」
おとなしくうなづいた君の頭を撫でる。
気持ち良さそうに目を細めた。
君は昔からこれが好きだったなぁ。
と思いながら、昔の面影を見つけた。
「じゃあ、また電話して」
「うん」
携帯の番号とアドレスを書いたメモを手に握らせる。
細くて、色が白くて、綺麗だったけれど、力を感じなかった。
手を振ると、片手をズボンのポケットに入れて、もう片方で小さく振り返してくれた。
そして来た道を戻る。
生徒たちは昼休みらしく揃って移動していた。
考えていなかったところで足止めをくらったが、その生徒たちの中に見知った顔があった。
どこかで見た顔だ。
いつも、あの子と一緒だった子だ。
彼も元気そうで何よりだ。
でも、もう一緒にいないのだろうか。
あの子は彼に会いたくてこの学校に編入したのかと思っていたのに。
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