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好きー2
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目の前の雪城は怯えたようにまだ俺と距離を取りたがる。
「お…俺、たくさん八つ当たりしたけど?」
「だって、それは俺のせいだろ」
「黙ってお前の前から居なくなった、けど…?」
「だから、俺のせいだって、それ」
「俺…お前のこと、襲ったけど…?」
「本当に嫌いだったら触れたりしない」
全部、お前だけのせいじゃないから。
俺のせいだって、今まで通りに思ってくれてていいから。
この気持ちだけは、わかってほしい。
「そんなに俺がお前を好きなのが疑わしいなら、別に認めなくていい。これから嫌ってほどわからせてやる」
「……っ」
「だから、お前は俺の存在をちゃんと認めろ。“俺”は“雪城”が好きなんだよ」
ガッと、警官服の襟を掴んで引き寄せる。
大きな瞳が更に開かれる。
「お前はどうなんだよ」
「俺は…、」
気まずそうに一度視線を外してゆっくりと目を閉じる。
相変わらず芸術のように綺麗な顔だと至近距離で改めてじわじわと認めさせられる。
ふわりと、一つ涼しげな風が吹いて。
そして再び雪城の瞳が開かれた。
「俺はお前のことーーーーー」
「ーーおい。お前、何してんだよ」
聞き覚えのある声が聞こえたと思ったら、次の瞬間俺はその声の主に押し飛ばされた。
「いっ…」
本日二度目の尻餅をついて、顔を上げると久し振りに見た顔が。
「お前、まだ槙乃のこと傷つけんのかよ。ふざけんなよ」
「そ、うさん…」
すっと蒼さんは立膝をついて片手で俺の襟を掴んだ。
もう片方の手は高い位置で拳が握られていた。
御子柴と同じ顔だけど、あいつからは見たことも無い怒りの感情が露わになった表情だった。
あぁ、もう今日は体育祭どころじゃないな、なんて頭の中で静かにしょうもないことを考えていた。
「お前、本当槙乃のなんなんだよ…っ!」
襟を握る手に力が入って、握り拳が振り落とされるのが見えた。
反射的に目をつぶって、こんなところまで自分の弱い部分が出てるのかと思ったら情けなかった。
「やめろ!!蒼!!」
と、聞いたこともない大声で雪城が叫ぶのが聞こえて、それから一向に拳が降りてこず、目を開けると蒼さんの拳は俺の顔に触れる手前でピタリと止まっていて。
「槙乃…なんで止めんだよ」
「そいつは“春くん”じゃない」
「は?この前言ってたろ、こいつだって。嫌いじゃねぇのかよ。恨んでるんじゃねぇのかよ」
「もういいんだって」
「じゃあ、お前今まで苦しんできたの、何のためだよ」
「…蒼」
「…ッチ」
固く握った拳を落として、俺から離れた蒼さんは今度は雪城に噛み付いた。
けどそれを優しくなだめるように、静かに話す雪城の表情は今まで見たことのないほど穏やかな表情で、それを見た蒼さんは舌打ちをしながらも何とか引き下がる事にしたようだった。
「ほら、俺の晴れ舞台見に来たんだろ」
「晴れ舞台もくそもねぇよ。見に来たらお前いなかったんだぞ」
「ごめんって」
ほら、運動場戻ろ、と落ち着いた蒼さんの背中をグイグイ押すと、雪城はこちらを振り向いた。
「体育祭、終わったら、」
「?」
「話、させて」
「……お、おお…」
いつも通り、だるそうな表情ではあったが、少し言葉にキツさが無くなったように感じて俺は少し戸惑いながらも返事をした。
雪城から何かを誘ってくるように言ったのは初めてだった。
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