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雨 岩泉→←及川
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岩泉side
なんで、あの場をすぐ動かなかったんだろう。
「一静…」
「ん。来いよ徹」
いや、動けなかったのかもしれない。
二人があまりにもお似合いで、甘い、二人だけの空間を出していたから。
(あぁ…終わったな…)
そう直感した。
人生で、最初で最後の恋。
いや、始まってすらいなかったのかもしれない。
なんの努力もせず、ただただあいつに甘えていただけ。
しかも、それはあいつにとってみんなに、平等に与えられているもの。
そして幼馴染みという立場に胡座をかき、なにもしてこなかったのは紛れもない、俺自身。
「馬鹿だな…俺」
自分に言い聞かせるように呟き、その場から走り出す。
部室棟の屋根がある部分から一歩出てしまえば、どしゃ降りの雨が俺の体を叩きつける。
そんな事が気にならないくらいショックだった。
それでも…あんな光景を見た後でもまだ希望を捨て切れていない自分に、心底嫌気が差した。
「はぁ…はぁ…」
走って、走って、足がもつれて、転びかけて、転んで…
どれだけ走っても、何回転びかけても…転んでも
あの二人の、あの光景が頭から離れない。
「うわぁぁぁぁぁ…!」
俺は柄にも無く泣いた。
大声で、沢山の涙を流して。
でも、涙も声も、全て雨が消してくれる。
(涙と雨と一緒に俺のこの思いも流れてしまえばいいのに…)
それができたらどれだけ楽になれるだろう。
でも、雨で流れるほどこの思いは薄くなかった。
流れるどころが、泣けば泣くほどあいつへの思いは濃くなるばかり。
「好きだ…及川」
その呟きすら、大雨の中に流れていった…
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