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京治はいい子
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「…あし…!あ…か…」
「赤葦!!」
考えに浸りすぎて目の前にいた木兎さんの呼びかけに反応できなかった。
「あ、…すみませ、木兎さ…」
自分の視界がいきなり滲んでいく。
一粒零れてしまえばダムが決壊したかのように次から次へと流れてくる涙。
「あ、赤葦?!」
(木兎さんが困ってる…他の人の迷惑にも…早く、早く止まれっ…!)
(俺は“いい子”でいなくちゃいけないんだ…!!)
「赤葦?!木兎お前赤葦に何したんだよ!」
「俺は何もしてないぞ?!声かけたらいきなり泣き出して…赤葦?俺何かしたか?」
「違っ…ぼくと、さんは…なにも…」
泣いたせいで声がしゃくり上げてしまい、上手く言葉を繋げない。
「おれ、は…いい子でいなくちゃ…っ…いけないっんで、す…」
そう。いい子と言われる度に、褒められる度に、どんどん背中は重くなっていって…
今では立っているのさえやっとなぐらいだった。
いい子にしなければと気を張れば張るほどにプレッシャーは重くなっていった。
「……」
「っ…ひっ…く…」
「赤葦」
未だに止まらない赤葦の涙を拭いながら木兎は赤葦の名前を呼んだ。
「赤葦はいい子だぞ」
そして赤葦を安心させるように優しく頭を撫でる。
「っ…でも、…俺は……」
「赤葦は頑張ってる。二年なのに副部長で俺をしっかり支えてくれる」
「そーそー。木兎よりずっと部長らしいぞ」
「木葉?!」
「だってそうじゃん。もう少し赤葦に楽させてやれ」
「うぐっ…とにかく!赤葦はもう十分頑張ってる!だから自分の事認めてやれ。な?」
その言葉に自分が背負っていた重みが無くなって、体が、心がポカポカと暖かくなる。
すると赤葦の目からまた涙が溢れた。
「え?!え?!赤葦?!?!」
「木兎うるさい。赤葦?大丈夫か?」
「はい、っ…俺、このチームに入って良かったです」
「!…そうか!」
京治はいい子。
仲間を愛し、愛されるとてもいい子である。
end
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