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拝啓○○な君へ 月島×山口
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※注意
この話にはネタバレ及び捏造を含みます
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きっと貴方がこの手紙を読むとき、俺は貴方の隣にいないでしょう
その事を先に謝まらせてください。でも、俺にはこうする方法しか思いつかなかったんです。貴方ならもっといい方法を思いついたのかな、なんて考えたりもしました。
貴方と最初に出会った時のことは今でも鮮明に覚えています。
貴方は覚えていなかったみたいだけど、公園で助けられたあの時から、俺は貴方に恋をしていました。気持ち悪いと思ったならごめんなさい。でも、この手紙だけは最後まで読んでくれると嬉しいです。貴方のことだからきっと怪訝な顔をしながらこの手紙を読んでるんでしょうね。簡単に想像できました。伊達に何年も幼馴染みをやってきたわけではありませんから。
この手紙はその“幼馴染み”という関係を自分で壊した俺という愚か者が、自己満足の為に書いた手紙です。
さっきも言いましたが、俺は貴方に助けられてから貴方をヒーローとして見ていました。…いつからか、そのヒーローという“憧れ”は恋に変わっていきました。最初はもちろん戸惑ったし、こんな想いなんて無いほうがいいと何度気持ちを捨てようとしたことか分かりません。でも俺はこの想いを捨てることが出来なかった。
烏野に入れて、貴方と一緒に学び、皆とバレーが出来ることが嬉しかった。夏の合宿で貴方は変わりましたね
あの時、本当の意味で貴方と向き合えた気がします。
貴方は俺を恰好いいと言ったけれど、俺からすれば貴方の方が何倍も、何十倍も格好良いです。これだけは譲れません。
青葉城西との試合は心休まる場面なんて一つも無かった。取って、取られて、また取り返す。
この繰り返しでコートの外にいた俺はずっとハラハラしていました。俺がサーブを初めて成功させた時のあの言葉、今でも俺の心に響いています。ありがとう。相手のスパイクを胸で受け止めたとき、本当はすごく痛かった。でもあの痛みは俺が今貴方と一緒にコートに立てているということの証。ベンチに下がった後もジンジンと痛む胸をユニフォームの上から握りしめました。
そんな試合を勝ち進み、白鳥沢で指の激痛に耐えながらブロックを飛び続けた貴方を見て、ああ、もう大丈夫なんだと思ったら場違いな涙が溢れそうになりました。
春高決勝では1回戦目で音駒と当たり、黒尾さんが貴方のブロックを見て泣きそうになっていたのを知っていますか?もし知らなかったのなら、黒尾さん本人には言わないであげてください。多分、恥ずかしさであのポーカーフェイスが崩れると思うので
音駒に勝ち、次に待っていたのは木兎さんと赤葦さん率いる梟谷学園でしたね。木兎さんの事は気づいていたかも知れませんが、あの時一番嬉しそうにしていたのが実は赤葦さんだったりします
やっぱりいつものポーカーフェイスだったけど、それでも貴方がブロックで木兎さんを止める度に嬉しそうに、悔しそうに目を細めていました
ここまで書いてきて、再認識したことがあります。
貴方は沢山の人に愛されているということです
烏野の皆を初め、黒尾さん、木兎さん、赤葦さん…俺が知らないだけでもっといるのかもしれないですね。貴方の周りにはいつだって誰かが傍にいた。それは貴方が人を引き付けるカリスマ性を持っていたからかな?
もしそうなら、流石としか言いようがないです
長々と続いてきた手紙ももうお終いです。
最後にこれだけ言わせてください
大好きだよ。ツッキー
山口忠
「はあっ、はっ…っくそっ…!」
手紙を握りしめながら走る
どこにあいつがいるかとか、そんなこと考えてなかった
ただひたすら走って、走って、足は自然とあの場所へ向かう
ねえ、なに勝手にいなくなろうとしてるの?
僕が好き?こんな捻くれた僕を好きになるなんてほんと物好き。
黒尾さんの話とか、初耳なんだけど
次に会ったら絶対からかってやる
お前と一緒に東京に行って、学校に押しかけて、校門のところで2人で叫んで、あの人を赤面させてやろうよ
ねえ
「山口っ!」
「つっきー…?」
夕日に染められた公園、…僕達が初めて出会った場所
そこにはもう山口以外誰もいない
公園の遊具と一緒にオレンジ色に染まった山口は何処か寂しそうに見えて。…気が付いたら山口を抱きしめていた
そうしなければ、山口が本当に消えてしまう気がして
「つっきー…?」
腕の中で山口は戸惑ったようにもう一度僕の名前を呼んだ
何度も呼ばれているあだ名にひどく安心して山口を更に強く抱きしめる
「好き」
そう呟けば今まで大人しく腕に収まっていた山口がいきなり暴れだした
しばらく暴れた後、離す気が無いのを理解したのかポスンと頭を僕の胸に預けた
「…うそだよ…」
ポツリと呟かれたその言葉は震えていて、山口が泣いていることが分かった
肩と声を震わせながら山口は続ける
「うそだ、つっきーの好きと、俺の好きは違う。それに、俺はつっきーに好かれるような所なんて…」
「違うよ山口」
唐突に言葉を発した僕に驚いたのか、山口の体がビクッと動く
普段はこんなに怖がりなのにいざとなれば前を向いて皆を導ける恰好いい奴
「僕の好きと山口の好きは同じ。僕がせっかく素直になったのに、山口は僕を否定するんだ?」
「っちがっ…」
「じゃあ、いいよね?」
「んっ…」
山口の答えを聞く前にその唇を塞いだ。
「つ、っき、…」
パタパタと次々山口の目から溢れる涙
合わせた唇は柔らかくて、甘くて、少しだけ、涙の味がした。
end
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