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俺の恋人は×××です
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(腐男子×生徒会長)
生徒会長を務めてから最も多忙を極めてふらふらな足取りで恋人の寮部屋へと仮眠と癒しを取りに来た俺の目の前には、俺の愚痴盛り沢山な話を最後まで聞いて大口開けて大爆笑している恋人が居る。
途中までは良かった。親身に聞いてくれたし。けども佳境に入るにつれて顔を顰め始め、明らかに笑いを堪える表情になり、余程力んだのか真っ赤になって肩を震わせていた。そして俺が「~という訳なんだ」で締め括ると、恋人はブハッッと盛大に吹き出したのだ。
てっきり散々な目に遭っている自分を慰めてくれるもんだと思っていた俺は、俺の不幸を笑うその姿にショックを受けた。
「まっまじテンプレ乙…っ!!マリモ凄過ぎるだろ、有り得ねーっ!ぐひゃひゃっ!」
「……」
「つうかマリモ信者やべーわ!ドMの集まりか何かじゃねえの?マリモに調教か何かされちゃってる訳?あっそれいいかもな、あの馬鹿でかい声で言葉責めとかわろす…!!」
「……」
「これ程萌えない受け子も珍しいわ!攻めに置き換えるとしてもないないない!寧ろあれをカプに組み合わせるとか恐ろしくて出来んっ!王道君は萌えても、アンチ君はお呼びじゃないっていう!」
よく分からんネットスラングのような言葉を吐き出して、恋人はなおも笑う。
俺の恋人の太郎(タロウ)は腐男子?とかいうもので、男同士の恋愛を描いた創作物が好きらしい。それは付き合い始める前にカミングアウト済みで、そんな太郎の一面を受け入れた上で俺達は交際をスタートさせた。
たまにネタが~やら萌えが~やらと頭を抱えたり、嬉々として語ったりするが、俺を同じ趣味に染めようとするような無理強いはしないし、何よりいつも優しく気遣ってくれる。どんな太郎も俺は大好きだ。
……が、しかし、どんなに好きであったとしても、恋人の不幸で笑い転げる今の太郎を許せる程、俺は寛容ではない。涙腺だって緩むさ。
「笑うな…」
半泣きで睨み付けてみるものの、太郎はなおも床を転げ回っている。
耐えられなくなった俺は太郎の身体を仰向けにして後ろ向きで跨がり、驚く太郎の両足を脇に挟み込んで太郎の背中が反るように後ろに体重をかけた。逆エビ固め。またの名をボストンクラブ。
ピンとこない子は調べてみよう。
「わーらーうーなあああっ!!」
「いでででっギブギブ!」
俺にプロレス技を決められた太郎は、床を叩いて痛みに悶絶して涙目だ。俺の気も知らないで笑い転げているのが悪い。
太郎をボストンクラブの刑に処して思い知らせた俺は、暫くしてから太郎を解放してあげた。
「ごめんごめん。余りにもテンプレなアンチ展開だったもんだからツボった」
「ばか。太郎のばか。」
「ごめんって。頼むから機嫌直してくれよ」
体育座りでぐすぐすと鼻を啜る俺を、太郎は苦笑いで抱き締めた。
「笑ったのはあくまでマリモとマリモ信者に対してだけで、俺は心底ふねを心配してる」
「嘘だ…」
「嘘じゃない。これでもふねが倒れやしないか気が気じゃないんだ。手助けしたいけど俺は庶民だしさ、生徒会の仕事を手伝ってやりたいけど全然イケメンじゃないから周りに認められなくて反感買って、逆にふねの邪魔になるかもしんない。慰めて励ますことくらいしか出来ない自分の力が、ちっぽけ過ぎて情けない」
「たろー…っ」
「ほんとにごめんな、ふね。こんな奴が彼氏で。俺、ふねの為にもっと頑張るから」
悔しげに歪められた表情に、胸がきゅうっと締め付けられた。
庶民だから、特待生だからって太郎がいつも頑張ってるの俺は知ってる。俺に釣り合う男になりたいって、周りに文句なんか言わせないくらいに磨いてやるって、お洒落にも気を使ってる。
勉強も運動もひた向きに頑張って、成績も身体付きも出会った頃とは見違えるように変わった。
太郎がまだ自分に納得いかないと頑なに言うから、まだ俺の親衛隊にしか付き合ってることバラしてないけど、でもそんな一生懸命な太郎を親衛隊の皆は『とってもお似合いですよ!愛ですね!』ってちゃんと認めて応援してくれてるじゃないか。太郎は自分を過小評価し過ぎなんだよ。
「やっぱり太郎はばかだ!全然分かってない…っ!」
「ふね……ごめん」
「俺はただ傍に居てくれるだけでも充分なのに…っ」
「え」
「周りを気にし過ぎて、俺の気持ち無視してるだろ。お前はすっごく、すーっごく良い男だってこといい加減自覚しろ!!」
俺が声を張り上げて言った最後の言葉に、太郎の顔はみるみる赤く染まっていく。泣きたいのか笑いたいのか、恥ずかしいのか嬉しいのか、ごちゃ混ぜな引き攣った顔で太郎は苦しいくらい抱き締める力を強めた。
こっちからも太郎に強く抱き着いて擦り寄ったら、「俺も、ふねがすっごく、すーっごく可愛いと思ってるよ…!!」だなんて切り返されて、俺も同じような顔になってしまった気がする。
すりすりと俺の輪郭を撫でた太郎は、いつもの優しくて柔らかい微笑みを浮かべて俺が求めていた言葉をくれた。
「今からでも、愛情たっぷりに慰めさせてくれるか?」
「うん…慰めて欲しい…」
その笑みを湛える唇に、俺はうっとりと口付けた。
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