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夢
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僕「ん…」
ぼんやりとかすむ意識の中、意識が浮上した。
けれど、目を開けたそこは懐かしいまだ僕と母さんだけの家だった。
一戸建ての、二階はなくキッチンとリビング、それぞれの自室が2つあるだけの大きいとは言えない家。
だけど僕はその家が大好きだった。
なぜだろうという気持ちより、嬉しいという気持ちが大きかった。
もそもそと布団から出て、リビングに出る。
そこからはキッチンに立って僕に背を向ける母さんの姿があった。
僕「母さん」
母さん「あら遥、おはよう」
振り返ってふわりと微笑む。
僕「父さんは?」
母さん「何言ってるの。ずっと私と遥だけだったじゃない」
ふふふ、まだ寝ぼけてるのねと母さんは笑う。
あぁ、幸せだ。
父さんも、あの学園もない。
穏やかで、心地の良い空間。
母さん「ほら遥、ご飯食べちゃいなさい」
僕「ありがとう、母さん」
何より、父さんが一緒だった時からあまり見れていなかった母さんの顔。
この人は今、僕だけの母さんだ…。
朝ごはんを食べて2人でゆっくりと過ごす。
テレビを見たり、皿を洗ったり、洗濯物を干したり課題をしたり。
すごくすごく、楽しい時間。
けれどふと気づくと、あの鈴原邸にいた。
僕「なんで…」
気配がして後ろを振り向くと、無表情で僕を見下ろしている父さんと、その隣に立つ母さん。
ぐっと髪の毛を握られ、引っ張られる。
僕「か、母さん!見ないで下さい!」
見せないで。
殴ってもいいから、蹴ってもいいから、母さんにだけは知られないで!
父さん「何を言っている」
母さん「遥、あなたわたしが知らないと思ってたの?」
僕「え、?」
母さん「この人が遥をどうしているかなんて、知っていたわ。
それが条件だったもの」
僕「条件って、どういう…」
膝を追って僕の顔の高さに合わせた。
母さん「この人と結婚するかわり、あなたをどうしてもいいって
母親なら、駄目だというところなんでしょうけど。
まぁずっと邪魔だったし、それでも結婚してくれるならいいかなって」
ふふふ、と笑う母さんの顔はもう前のような幸せそうな顔じゃなかった。
ふと、気づいた。
母さんは、僕がいるとき笑顔だったろうか。
答えはNOだ。
母さんが笑顔の時は、必ず父さんといる時だけ。
鈴原へ来て、僕へ向かって幸せそうに笑ったことなんて、なかった。
僕「あ、ぁぁ……」
グラグラと周りの景色が崩れていく。
一瞬、最後の一瞬「鈴原!」と声が聞こえた気がした。
二ノ宮君の声に似ていたけど、きっとそれは違う………。
次目が覚めた時は、寮の自室だった。
まくらが濡れていたのは、きっと夢のせいだ。
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