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人間拾いました。
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「ふぃ?っ、くっそ急に雨なんか降ってきてんじゃねぇよ、ったく。」
突然降ってきた雨に、手に持っていたレンタルDVDを取り敢えずの傘代わりに掲げる。
「車で来ればよかったな、ちくしょ。」
小さい毒づきながらも足はせっせとレンタルDVD店に向かう。
近いからとマンションから歩いて来た自分が馬鹿だった。
三日前に借りていたDVDの貸し出し期限が今日までだったのを完全に忘れていたのだ。
今日のレンタル店は商売上手だ。
貸し出し料金よりも延滞料金を多く取られるのだから恐ろしい。
「しっかしもうさすがに閉まってるよなぁ・・・」
都会の店ならまだしも、ここは郊外と呼ぶにもおこがましいほど寂れたドの付く田舎だ。
日付が変わる前には電車もバスもきっちり寝台に入り、店も個人、チェーンに関わらずシャッターを下ろす。
かろうじて寝ずにまじめに働くコンビニがしずしずとその明りを灯しているくらいだ。
「あー、やっぱりか・・・」
案の定、店は閉店10分前に早々と灯りを消し、眠りにつこうとしていた。
「しょうがねえな、閉店時間は過ぎてねえんだし返却ポストに・・・ん」
店の前に併設された返却用のポストに向かおうとしたとき、ふと店の自動ドアと自販機のあいだに人影が見えたような気がし、
足を止めた。
「んー・・・っん?」
微かに顔が青ざめる。
幽霊、
「・・・か?」
自販機にもたれかかるようにして、うずくまつまっている人影がぼんやりと見えた。
ならば触らぬ幽霊になんとやら。
そろそろと前を通り過ぎようとしたとき、
「・・・ッゲホ、」
幽霊が咳をした。
「っひぇぁっ!」
年甲斐もなく可愛らしい悲鳴を上げてしまった。
「・・・」
幽霊は相変わらず下を向いている。
が、自販機の明かりを頼りによく見ると、
生きている人間であることがわかる。
茶色がかった髪に黒っぽい服装。
足もちゃんとある。
「子ども・・・か?」
その人影はどうやら子どものようだった。
幼児ほど小さくはないが、華奢な身体つきからみるに、高校生くらいだろうか。
だとしたらこんな所でこんな時間に子どもが何を。
大人としての責任よりも、好奇心が勝ってしまって。
「・・・おい、お前こんなとこでなにやってんだ」
つい話しかけてしまった。
「・・・ん」
億劫そうに顔を上げる、少年。
(う、わ。・・・えらい綺麗なガキだな。)
ハッキリとした目鼻立ちが目立つ、
色素の薄い瞳と肌。
外国の血が入っているのかもしれない。
美しい少年だった。
「・・・おっさん、誰。」
眉に皺を寄せて思いっきり睨んでくる。
しかしおっさんとは。
「おっさん言うなおっさんて!綺麗な顔して口悪いなおい!俺はまださんじゅ・・・」
「うるさいな・・・頭に響くからデカイ声出すなよ・・・」
少年はどうやら体調が悪いようだった。
肌の青白さは生来の肌の色と自販機の明かりのせいではないらしい。
「・・・・家どこだ、遠いのか。」
「・・・ん、」
肯定とも否定とも取れない返事をする少年。
「・・・っ、仕方ねぇな。」
この様子ではここにいる理由を話すのも辛いだろう。
「俺ん家来い。病院はどこももう閉まってるだろうから今日はうちに置いてやる。」
あいにく気を使うような同居人もいない。
「・・・は、何いって・・・」
少年の言葉は聞かず、ツカツカと歩き返却ポストにDVDを投げ込む。
「オラ、掴まれ。」
少年の脇に手を入れて立たせる。
「ちょ、っいいって!」
「おうコラ文句言うな!こんなとこにガキほっといたら寝覚めが悪いんだよ!」
暴れる少年を無理やり立たせて半ば引きずるように歩く。
「お前、名前は。」
ぐったりと掴まる少年に訪ねると、
「・・・おっさんが先に名乗ってよ。」
生意気な返事をされた。
「お前なぁっ!!・・・っは、まぁいいや。
・・・樋口祥太郎だよ。んでお前は。」
「・・・・・・春樹。・・・宮間春樹」
「春樹か、いくつだ。」
「・・・・高二。」
「高二ってえと18か。」
「・・・17だよ。」
いかんいかん。自分が高校生だったころなどとうの昔なのでそこらへんの感覚が麻痺しているようだ。年をとったなぁ。
そんな事を考えていると、春樹がまた咳をした。
顔色は悪いが、身体は焼けるように熱い。
加えて雨足も強くなり、しとしとと身体を濡らす。
タクシーを拾おうにもそもそも車の往来自体が少ない。
車で来ればよかったと改めて後悔する。
「仕方ねぇな。」
呟くと、自分の上着を脱ぎ、春樹に頭から被せる。
「え、ちょ」
そのまま少年の身体を横抱きに持ち上げた。
いわゆるお姫様抱っこだ。
「ちょっとなにすん・・」
「っせ、黙って掴まっとけ。」
春樹の身体が予想以上に軽いことに心の中で驚きながら、歩く速度を速める。
「家まで寝とけ。」
「・・・寝れないっての、こんな状況で・・・」
春樹はそっとおっさんの顔を見上げる。
いわゆるイケメン、なのだろう。
自分とは真反対の、凛々しい顔立ち。
すっきりとした切れ長の瞳に薄い唇。
「・・・煙草くさ・・・」
言いながら春樹は祥太郎の胸に頭を預けた。
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