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貴方の世界に ウタ×金
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コンコンコン、
「失礼しまーす…ウタさん、いますか?」
ウタさんのお店、HySy ArtMask Studioのドアをノックする。
中は薄暗くて、人の気配なんてなかった。
(いないのかなー…)
「出来るだけ早い方が良かったんだけどな……」
ここに来る原因は、遡ること数日前。
あんていくのバイトの帰り、ちょうど喰種同士の共食い現場に鉢合わせし、逃げようとした途端白鳩の人達に見つかった。
幸いマスクを持っていたから顔は見られなかったけど、逃げる最中に軽く戦闘になって、その時にマスクが壊れてしまった。
と言っても、マスクの目を隠す部分と口を隠す部分が切れて別々になってしまっただけだけど。
それでも、せっかく僕のために作ってくれたものだし、このまま放置するわけにもいかなかった。
かといって、僕はマスクなんて直せない。
だから、このマスクを作ってくれた人でもあるウタさんに頼んで、マスク直してもらおうと思ったのだ。
それなら少しでも早い方がいいのでは、バイトの帰りを使って今日、ここに来たのだった。
それに。
(ちょっと会いたかった……なんて。)
「でも、いないなら仕方ないか……」
帰ろう、そう思って足の向きを変えた時。
……カタン。
奥の方で、少し音がした。
(もしかして、奥の方にいすぎて僕が来たのに気づいてないのかな…?)
奥に足を進める。暗いから、何度か飾られたマスクにぶつかった。
奥の方には、作りかけのマスクとかが沢山置いてあった。でも、肝心のウタさんはいない。
「やっぱりいないのかな……」
なんとなく、壊れたマスクを取り出した。
ウタさんの作るマスクはとても綺麗だったりかっこよかったり、目を奪われるものばかりだけど、自分としてはこのマスクが一番好きだと思う。
だってこれは、ウタさんが僕のためだけに作ってくれたマスクだから。
だから、壊してしまったときはかなり焦った。
一刻も早く、直したかった。
「また早いうちに来よう……」
バイトもあったし、20区から4区まで来たからかなり遅くなってしまった。
そりゃあ、閉店しててもおかしくないってぐらいの時間だ。
(帰ろう……)
入り口に向かってトボトボと歩く。気分が沈んでるせいか、下ばっかり向いていた。
その時。
「ばぁー。」
「わっ!?!?!?」
突然後ろから声がしたと思ったら、首に手をかけられ抱きすくめられた。
驚いて後ろを向いたら、かなり近いところにウタさんの顔があってさらに驚いた。というか顔が熱くなった。
「驚いた?」
手は離さないままそう言われて、顔を隠すように前を向いた。
「驚きましたよ…いたなら声かけてください……」
「ごめんね。つい。」
耳元で話されるから声がダイレクトに届く。ついでに息も。
心拍数がかなり上がっているのが分かる。多分、顔も真っ赤だ。
「それで、今日はどうしたの?もしかして、そのマスク?」
「あ、はい。白鳩と戦った時に壊れてしまって……」
これはきっと用事が終わるまで離してくれないと察して、マスクを持って現状を伝えた。
「あららー。でも、そんな壊れてもないね。これならすぐ直ると思う。」
ホッとして、マスクをウタさんに預けた。これで用事は完了。
「じゃあそろそろ帰るので、離してくれると……わっ、」
離してくれると助かります、そう言う前に手に力を込められて、バランスを崩してウタさんに寄りかかる形になってしまった。
背中にウタさんの熱を感じて、さっきより顔が真っ赤になったのが分かる。
「このマスクさ、ほんとにすぐ直せちゃうから、ちょっと待っててくれたらすぐ直すよ。」
上から覗き込まれて、真っ赤な顔をモロに見られた。
「あ、……じゃあ、お願いします…」
下を向いてそう呟くと、「おっけー。」という若干楽しそうな声が聞こえた。
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2話に続きます!
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