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過去は還らない12
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キィィィィン……
「ぐっ!?ぎ、ぃ…があぁぁぁああああああ!!」
そうつぶやいた途端、何かが頭の中に流れ込んできた。
痛みと苦しみ、その中にあった小さな小さな幸せ。
……〝僕〟の記憶。
リゼさんに会って半喰種になって、あんていくのみんなと出会って、それから紡いできた僕の人生。
…そうだ。
僕は店長を助けようとしてCCG梟戦の渦中に行ったんだ。そして、有馬さんに…
そこからは、佐々木琲世として2年間喰種を殺し続けたんだ。
「…西尾先輩」
Sレートのオロチとなっていた西尾先輩も殺しそうになった。
そうだ、あの人は…亜門さんはどうなったんだろうか。
覚えてない。亜門さんも、ヒデも──
…僕は、存在していていいのだろうか
『人間の僕だけだ──喰種の僕だけだ。』
いつしか思ったあの言葉。
果たして、守れているのだろうか。
梟戦で、亜門さんの腕を奪った。
佐々木琲世となってから、数え切れないほどの喰種を〝駆逐〟した。
どちら側でもありながら、どちら側も傷つけて。
そんな僕に、帰る場所などあるのだろうか。
まだ頭痛は終わらない。
苦しくて、辛くて、必死に助けを求めた。
誰でもいい。
僕を
助 け て
──────
気づいたら、CCGの前にいた。
なんで、どうして。
どうして僕はここに?
「…ハイセ?」
ハッと振り返る。
「アキ、ラさん、」
真戸暁。CCGの捜査官。使ってるクインケは…
フエグチ。
「あ、あ"あ"っ…」
なんで、なんで今まで気づかなかったんだ。
「ハイセ?」
それは。そのクインケは。
「リョ、あ"っっ、リョーコ、さん…」
リョーコさんが待ち続けた…ご主人の、赫子。
なんで。
アキラさん。
アキラさん。
「僕、僕僕僕は、…」
どうして殺したの。
「ぼ、くはっ…」
リョーコさんも。
「アキラ、さんっ…!」
「…お前、本当に佐々木琲世なのか?」
佐々木琲世?僕は?僕僕僕は。
違う。
僕は、金木研。
佐々木琲世じゃない。
なんで?
佐々木琲世の記憶もあるのに。
「…ハイセ。お前をSレート喰種として駆除する。」
帰れない。
絶望的なくらい、そう思った。
もう、CCGへは帰れない。
「っ、…ぐ、っぅ、あ"あ"っ…」
「待てっ!」
僕は、どこに、向かえばいいの。
あんていくは、もうない。
『────』
ノイズのような頭痛と、繰り返される記憶。
あれは、僕が梟戦に向かおうとしている時だ。
『……待って、いる。』
か細い声が、確かに聞こえていた。
『あのカフェで、待っているよ…ずっと、いつまでも……』
叶わなかった約束。
いつまでとは、いつまでだろう。
もしかしたら、今も健在だろうか。
ああ、会いたい──
会いたいよ、月山さん。
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