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過去は還らない18
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……………
沢山の手が、伸びていた。
僕の目の前を覆い尽くす、暗闇のその向こうから。
怖くて怖くて逃げ出して。
でも、逃げたその先でもその手は伸びてて。
気づいたら、周りを全部囲まれていた。
「カネキ」
「カネキくん」
「お兄ちゃん」
「ケン」
「ハイセ」
「琲世」
「先生」
「サッサン」
「佐々木一等」
僕を呼ぶ声が聞こえる。
…いや、ずっと前から聞こえてた。
耳を塞いで、目を閉じて。
必死に夢から目を逸らしていた。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
でも僕にはもう居場所がない。
喰種として生きようと思ってた。大切なものを守るために。
でも、気づいた時にはもう遅かったんだ。
僕は喰種も殺してしまった。
戻れないんだ。
もしみんなが許してくれて、戻れたとしても、戻りたくない。
ここにいたいんだ。
みんなとの出会いより、出会えたその奇跡より。
何より、あの時月山さんがくれた言葉が嬉しかったから。
あの言葉だけが、僕を全部の苦しみから引っ張り出してくれたんだ。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
許してなんて言わないから。
せめて、もう少し夢を見させてください。
「……、………ん、……くん。カネキくん!!」
名前を呼ばれて、うっすらと目を開けた。
「…き…まさん、」
酷く焦っている月山さんが見える。
「カネキくん…!」
ああ、そうか。
あれは夢だったんだ。
僕は、またうなされてたんだ。
「もう、大丈夫です。」
ゆっくりと起き上がって額に手を当てた。
汗をかきすぎてびしょびしょだ。
「…また、〝あの夢〟かい?」
月山さんには、初めてこの夢を見た時に打ち明けた。
ストレスが溜まってたんだろうって言われた。
でも、時が経つにつれそんな事も言えなくなってきた。
他でもない自分自身だからわかる。これはストレスなんかじゃない。
罪悪感。みんなから、全ての重荷から逃げ出した僕の後悔と罪悪感からきてる悪夢。
月山さんだって、きっと気づいてる。
気づいてるけど、僕が言わないから敢えて言わないだけ。
きっと、いつか報いが来るんだろう。
「……月山さん、」
「なんだい?」
覚悟はしてる。それだけは逃げちゃいけないって分かってる。
ごめんなさい、月山さん。
「…だきしめて、ください。」
分かってて、それでもあなたに縋ります。
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