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過去は還らない20
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まず最初にするのは洗濯。洗濯機を回している間は食器を洗い、洗濯機が止まったら外に干しに行く。
森の中とだけあって、庭も信じられないくらい広い。しかも、ベランダ付き。
日当たりも風通しもいい場所に洗濯物を干したら、片付けがてら家を掃除。
月山さんは綺麗好きだから、いつもうんと綺麗にする。
高いところの誇りを落としたら掃除機をかけて、それが終わったら床を拭く。
それも終わったらあとは洗濯物をしまうだけだけど、まだ乾ききってないからそれまで待たなきゃいけない。
「今日は何しよう…」
時間を潰す内容は色々だけど、結局いつも本を読んでる気がする。
「……あ。」
大分読書に心が傾いていた時、丁度薪がなくなることを思い出した。
この家には月山さんの要望で暖炉がある。もちろん正真正銘の薪を使う暖炉。
ここは電気が通ってないからソーラーパネルを使うしかなく、それもお風呂や洗濯機、照明にほとんど消費する。
だから、寒くなる夜での暖炉は必須だった。
「取りに行かなきゃ…、」
暖炉に使う薪は家を出てすぐそばに積んである。
それを斧で割って持ってくればいいだけだ。
「あ…枝も取りに行かなきゃ…」
暖炉に火をつけるために最初の方は細い枝を使う。
しかも、確かそれは外の方も少なくなってた気がする。
と、いうことは。
この家を出て森に行かなければいけないということだ。
嫌でもアキラさんのことを思い出す。
まだ探していた。外に出たら遭うかもしれない。
違う、大丈夫。森の奥深くなんだ。そうそう見つからない。
それに、僕には月山さんがいる。
そして、その月山さんのためにも行かなきゃいけない。
「大丈夫、大丈夫…」
何度もそう言い聞かせ、外に出た。
外は呆れるほど静かだった。
あるのは木と草と空だけ。
僕が恐れていたものは、何一つなかった。
それでもまだ怖くて、恐る恐る森の中に入っていった。
枝を拾いながら周囲を見回し、音を立てないようにしながらまた枝を拾う。
それを何回も繰り返して、段々と緊張も解けていった。
「そうだよな…かなり森の奥だって月山さんも言ってたし、来るはずないよね…」
そう思うと、途端に安堵感が溢れてきた。
音も気にしないで枝を拾う。気を張らない分枝もすぐに集められた。
「これぐらいあれば大丈夫かな…それにしても、体力落ちたなぁ、僕。」
ただの薪拾いなのに、少し体が熱い。
息は上がってないけど、少し汗もかいてる。
「何年も動いてなければ当たり前、か。」
少し体を動かして帰ろうかな、と赫子を出してみる。
感覚は忘れてないから簡単に木の上にも登れた。
木の幹に鱗赫を巻き付けながらなるべく地面に触れずに動いてみる。ますます汗をかいたけど、すぐに家に着いた。
「ふぅ…いい運動になったなぁ。」
枝を分けて半分家の中に持ち帰り、薪も割って少し持っていった。
丁度乾いていた洗濯物もしまえば、するべき家事は終わりを告げた。
「…さて、一回シャワー入ろっかな。」
お湯を沸かすのはもったいないから、シャワーで汗だけ流して服を着る。その後は、いつも通り本を読んで時間を潰した。
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