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授業の喧騒を抜けて
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かくして、桜井と保健室まで歩くことになった俺なのだが──。
……話すことがねぇわ。
桜井はしれーっとした顔をしてスタスタ歩いていっちまうし。
(まぁ、メガネかけてるからどんな表情をしているか分かんないんだけどね)
昨日初対面したばっかだし、どんな話題を振ったらいいのか分かんないし。
だからと言って、沈黙は気まずいんだよなぁ。
俺が眉をひそめると、斜め前を歩いていた桜井が急に振り返った。
一瞬だけ怯むと、桜井は体をビクッと震わせた。
「……ぁ、あの……足は平気ですか……?」
そして、震えながらそう言葉を紡ぐ。
どうやら、捻ってしまった足の心配をしてくれているらしい。
俺は手をヒラヒラさせる。
「あぁ。 平気平気。 心配すんな」
「そ……そうですか……で、も痛そうですし……」
「……いや、俺としては顔面ボールしちまったお前の方が心配だぞ」
いやまぁ、俺の足首も痛々しい感じに腫れちゃってるんだけどね。
これは準備運動怠ったツケがまわってきただけだしな。
桜井の顔面ボールはそのツケのとばっちりだし。
「お前、病弱なんだろ? 見るからにひ弱そうだし。
なんか……ゴメンな」
でも、訴えられでもしたら堪ったもんじゃねぇ。
俺の高校ライフ一瞬で崩れるぞ。
俺が手を合わせると桜井は「ひぃ……」と声を漏らした。
……なんだこいつ。
小動物かよ。
俺は不意に昔飼っていたハムスターを思い出していた。
あー、可愛かったな、ハムちゃん。
「……ぇ……ぁ……別に……謝らなくてもいいので!
大丈夫です!!! ぇ…えっと、心配してくれて……ありがとうございます……!」
なんとなくハムちゃん(昔飼ってたハムスターの名前)と桜井を重ねてしまっていた為か、そう赤面しながらお礼を言うそいつを見て、何故か顔が火照った。
え、なに俺。
相手は人間の男だぞ。
でも、じっと見つめてくる桜井に心拍数が上がったのは事実なわけで。
「な……っ、い、いいでござるよ!!
だ……だからそんな見るな……!」
……なんだよ俺、ござるって。
焦りすぎだ。
桜井もキョトンとした顔をしている。
それから、「な……んですかござるって……」と呟いてクスッと笑みをもらした。
その顔に、少しだけ心臓が跳ね上がったのは秘密だ。
「だ……だから見てんじゃねぇよ……っ!」
顔を逸らし、足首が痛むが速足になる。
と、その時、俺の手首を小さな手が優しく掴んだ。
喉から「ふぉっ」なんていう変な音が出た。
「……ぁ…ぁ…ごめんなさい……うぇっと…保健室……通りすぎてますよ……?」
遠慮がちに上目遣いをするそいつに、体温が一度くらい上がった気がした。
「……だから…見てんじゃねぇよ!」
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