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忍び寄る悪魔。
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「……ふぇ……え……だ…いょうぶ……ですか…?」
どれくらいの時間が経ったか──気付くと、あいつが俺に手を差し伸べていた。
「……おう。 別に心配しなくていいから」
「……そ…そうですか」
俺はその手は取らずに自力で立ち上がった。
桜井は手に持った書類の束をギュッと抱きしめる。
ふむ、こいつは先コウにでも用事言いつけられてここに来たのか。
気持ちを落ち着かせる為にふぅ、と息を吐く。
それで、少し気が緩んだ。
そのせいなのかそれとも神の悪戯なのか。
その時、足首にビビッと走る痛み。
そういえば、すっかり忘れていたが昨日足を挫いてて──。
「……うわぁ……っ!!」
「……ふぇぇ……っ!?」
──ドン、と鈍い音が響いた。
思わず床に倒れこんでしまった俺は、なんと……桜井をギュッと抱きしめていたのである。
二人して床に共倒れである。
……いや、半分以上は俺が悪いんだけどね。
「……あ、あ、あの……こっ、近藤君……っ?」
俺の腕の中の桜井はまた、お得意の上目遣いで見上げてきた。
……少し乱れた服装とほんのり紅い顔に、また『可愛い』なんて思ってしまった。
黙ったまま腕に少し力を込める。
あいつの持っていた書類が乾いた音を立ててグシャグシャになった。
しばらく静かな部屋の中には俺達二人の吐息だけが響いていた。
とても、とても穏やかな時間で。
──なのに、なのに。
「──徹チャン?」
そう呟いてこちらへ期待を噛み締める様に一歩、また一歩近付いてくるそいつは、俺にとって悪魔に見えた。
「キャーーーーッ!!!! アタシ得CPだわぁッッッッ!!!!」
「黙りやがれこんクソビッチ!!!!」
「アタシビッチじゃないわよ!!??」
叫びながら頬を紅潮させる美咲に怯えたのか、下を向いた桜井がギュッと俺のシャツを掴んできた。
「……なんで二人して誰も来ないであろう空き教室でイチャイチャ……じゃない、エッチする直前の様な体制をしているのかね……!!??」
もはやえげつない程にニヤニヤしている美咲は無視である。
俺はとりあえず上半身を起こした。
一瞬桜井と密着した状態になったが、桜井はすぐに
「ふぁぁぁぁ……」
なんてキョドりながらどこかへ行ってしまった。
──部屋に残された、健全な男子と不健全な女子。
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