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行くな。
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そのヘラッとした声は、今はあまり聞きたくない声だった。
「──純平……」
その声の主は、そそくさと俺達の机と自分の机をくっ付けた。
思わず顔を逸らすと、遥が気まずそうに俺らの顔を見比べている。
まぁ、純平はいつものようになに食わぬ顔をしている訳だが。
「ん? 今、お取り込み中だったかな?」
「……ぃ、いえ……っ! ……ぁ……僕、席外しましょうか……?」
朝のこともあり気まずさMAXなのか、遥が腰を浮かせた。
純平がいつもと同じ様な態度で接してくることから、朝のことは単なるおふざけだったらしい──が、やはり意識してしまっている自分がいる。
そんな時にこいつと二人っきりになんてなれるか!
「……おい……っ、行くな!!」
反射的に遥の肩をグッと押して座らせる。
が、すぐにごめん、と言ってその手を離す。
すると遥は教室から出て何処かへ姿を消してしまった。
──まぁ、当然のことか。
その様子をジッと見ていた純平は、皮肉そうに口を開いた。
「ふぅーん、桜井君と随分仲良いんだねー。 友達が増えるのは良いことだよぉー」
「……何の真似だ。
俺は、あいつと弁当食べてたのに!」
純平の事は嫌いじゃない。
一年の頃からの付き合いで良いところも沢山知っているし、寧ろ好きだ。
──だけど昨日から変だ、こいつは。
簡単に言うと俺に干渉し過ぎなのである。
親父さんと喧嘩でもしたのか──……それは知らないが、やはり心配である。
純平は、グッと唇を噛んで何かを呟いた。
それから、吐き捨てるように俺に言う。
「……ほんっとお人好しだよ、徹は。
惚れた女に頼まれたくらいであんなのと仲良くするなんて」
「惚れた女って、あのフジョシのことか?
──あいつのことはただ友達として好きなだけで、女としては見てない!!!! それに、遥とは俺の意思でくっついてんの! なんなの、お前!!」
その言葉からはハッキリとした敵意が汲み取れ、癪に障った。
そして、感情のままに思いきり叫んでしまった。
しかしそれも、すぐに教室の喧騒にかき消される。
「──俺じゃダメなの? 徹は俺のことなんて嫌いか?
俺みたいに性格の悪い奴のことなんてどうだっていいんだろ? な?」
「……んなこと誰も言ってねぇだろうよ。
純平──なんかあったのか? お前は直ぐにそういうこと溜め込むから──俺に言えって言ったよな? 殴り込みでもなんでもしてやるって──」
「……ごめん。 ちょっと……俺、混乱しちゃって──。
ホント──自分じゃ、抑えらんなくて」
純平は、そう絞り出すように呟いた。
そう、こいつはこういう奴だ。
決して自分から助けを求めようとしない。
昨日今日と三日程の変な行動も、なにかあって混乱してしまっただけなのだろう。
「──別にいいよ。 純平が俺に迷惑かけることなんてしょっちゅうだろ」
そう、混乱しただけのこと──。
「……ごめん、徹」
あいつは、ニコッと笑った。
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