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やってしまった
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マズイ、やってしまった──。
俺は、トボトボと春の夜道を歩いていた。
親父と喧嘩してしまった。
……男に興味があるのが、バレてしまったのである。
それで、年甲斐もなく家を飛び出してしまった。
でも……行く当てなんてとてもない。
友達なんてつくったことないし、それに……唯一の友達には酷いことをしたし、言ってしまった。
『……ほんっとお人好しだよ、徹は。
惚れた女に頼まれたくらいであんなのと仲良くするなんて』
『──俺じゃダメなの? 徹は俺のことなんて嫌いか?
俺みたいに性格の悪い奴のことなんてどうだっていいんだろ? な?』
謝んなきゃ。
しれっとした顔してないで、謝んなきゃ。
でも、絶対嫌われた。
あいつに絶対嫌われた。
皆に嫌われた。
思わず冷たいコンクリートの上に座り込むと、目からは水が溢れ出す。
拭っても拭っても、抱えたカバンをを濡らしていく。
「……お前、なにしてる」
と、そんな俺の頭上から、そんな不機嫌そうな男の人の声が聞こえてきた。
顔をあげると、涙でぼやけてよくは見えないが背が高くて、スラッとした男の人が俺を見下ろしていた。
その男の人は、スッと俺に手を差し伸べた。
「立てるか?」
俺は有り難く、その手を取る。
そのフードを深く被った人は、俺のことを疑り深そうに見てから、
「……お前、徹の友達か?」
と、質問してくる。
俺が頷くと、その人は引きつった笑みを浮かべた。
……え、なにこれ、愛想笑いですか……?
「俺は、徹の兄だ」
「……徹の?」
その、徹の兄らしき人は俺に、着いてこいと呟いて歩き出した。
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