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友達だろ。
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お願いしますと遥は頭を下げるが、どうしてこいつはこんなにメガネを外したがらないのだろう。
それが分からない限り、他人の俺にはどうしようもできない気がする。
「じゃあ──、じゃあ、今日お前ん家行っていいか?」
今日は、塾も何もない日だ。
どうせ帰っても姉ちゃんにパシられるだけだし、遥の家へ行ったらなにか分かるかもしれない。
俺が提案すると、遥はうぇぇぇ……とたじろいだ。
「そ……それって……」
そして、お得意の上目遣い。
……ふむ、嫌なのだろうか。
ここで拒絶されたら、少しショックだなぁ……
俺は慎重にコミュ障のこいつの、次の言葉を待つ。
「……友達同士みたいですね……!」
「はぁ?」
遥は、さも嬉しそうにそう言った。
……え?
俺、友達認定されてなかったのか?
俺が顔を渋くしたのでビビったのか、遥はその嬉しそうな顔から一転、途端にいつものしょぼくれ顔になった。
「……あ、ご、ごめんなさい……調子に乗りすぎました……」
「……いや、俺は友達って思われてなかったことに驚きだわ」
──いつの間にか、教室は無人になっている。
西日が俺達の顔を照らし、暖めていく。
誰も、見ていない。
だから──ちょっとだけ、恥ずかしいこと言っていいかな?
「俺ら、友達だぞ。
だから、そんなに怯えてなくていい。 俺になんでも言ってくれ、遠慮もしなくていい」
俺は遥に笑顔を見せると、わかったかと返事を促す。
と、遥の方を見ると、何故かうつむいてだんまりしている。
そんなこいつの上履きに、ポタポタと落ちる水滴。
ハッとして遥の方を見ると、背中を震わせて嗚咽を漏らしている。
──泣いてる?
俺、なにかマズイこと言ったか……?
自分が涙に弱い性分だということは自覚している。
落ち続ける水滴に、焦って声が裏返る。
「ど、どうした?」
返事が無いので、遥の背中を擦ってみる。
それを一分程繰り返すと遥の背中は震えなくなり、嗚咽も聞こえなくなった。
「……ごめんなさい、僕……嬉しかったんです。
こんなに僕に優しくしてくれる人なんていなくて……っ
……ありがとう、徹」
遥は、泣き跡の付いた頬をキュッと上げて、可愛らしく笑った。
「……あ、あの……多分、僕の家来ても問題ないと思うので……是非来てください」
──こいつには動揺させられてばかりだな、とふと思った。
でも不思議なことに、俺の性格なら怒りそうなことでも、こいつがやったことなら親しみに変わる。
この胸の動悸の早さの原因を、俺はまだ知らない。
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