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人と人の境界線
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『……なに、どうしたの。もどかしいから早くしろ』
僕のことを睨んでくるこの人を見て、僕は縮み上がった。
なんだ、この人。
……スゴく怖い。
喉からは、いつものようにとても情けない声が出ていた。
僕はもう、その人とは関わりたくなかったし、関わる機会もないだろう。
だから、その人のことを知ろうとしなかった。
きっと、他の人と一緒で、僕のことを避けるんだろうと思った。
多分、人と人の間には境界線があって、それは浅いようで深く、低いようで高いんだ。
その境界線を越えるのは、僕にとってとても難しい。
一歩踏み出して、派手に転んでしまっても誰も見向きもしないんだ。
また痛い思いをするくらいなら、自分の中に閉じ籠って境界線のことは気にしないほうが楽だ。
なのに──。
『はぁ……じゃ、行くぞ』
僕の手を取ったその手は暖かくて。
『いや、俺はただお前と弁当一緒に食べようと思って』
僕だけに向けた笑みはぎこちなくて。
『遥、嫌がってんだろ。
メイド服なら俺が着てやるから、そいつから手を離せ』
僕を庇うその顔は、とても凛々しくて。
『俺ら、友達だぞ。
だから、そんなに怯えてなくていい。 俺になんでも言ってくれ、遠慮もしなくていい』
僕に言った言葉は、ずっしりと重かった。
どうして──。
どうしてなんだろう。
その人は、僕の境界線をいとも簡単に崩してしまった。
久しぶりの、僕の友達。
────いつまでも秘密にはしていられない。
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