アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
煩悩全開乙女達の秘めた本心
-
『美咲side』
「はぁ……」
私は、解放されている屋上でため息をつく。
そして、箸を開け閉めする。
空ではカラスが嘲笑うかのように鳴き、足元のコンクリートは驚いてしまう程に無機質だ。
たまに、こうやって弁当つつきながら屋上でボーッとする。
また、いつかみたいにアイツが来てくれないかなぁなんてくっだらない事妄想しながら。
所詮友達なんて利用するため、自分を守るためにあるものだ。
心を開いてなんになる。
ならなんで期待してんの、私は……
またスマートフォンが振動した。
またまた友達からメール。
嫌な印象を与えないように、丁度いい時間を開けて返信する。
嫌われないように立ち回り、人懐っこい笑顔を見せ、程よい距離感を保ちながらもいざという時はアッサリと切り捨てる。
いつの間に私はこんなに女子の暗黙のルールに呑まれてるんだろ。
アイツが言ってくれたじゃない、『お前はお前なんだから、変わらなくていい』って。
まぁ、鈍い本人には私の中でのその言葉の重さは分かんないんだろうけど。
変わらなくていいはずなのに、ちょっとの時間で人って変わっちゃうのね。
怖い怖い。
さて、いっそがしいアタシはこんなことしてる場合じゃないんだわ。
ライバルの『野々村情報屋』に負けないように情報を仕入れないといけないんだから!!
アタシがピョンと身軽に立ち上がると同時に、屋上のドアが開いた。
一瞬、期待した。
けど、屋上に現れたのはアタシが待ってた奴じゃなかった。
ま、当たり前ね。
「美咲先輩……っ……やっと居た」
そこに立っていたのは、息を切らせ鼻には汗を浮かべている佳子ちゃんだった。
佳子ちゃんは純平の妹で、アタシになぜか懐いている一年生だ。
アタシは人懐っこい笑みを顔に張り付ける。
「どうしたの、いつも元気な美咲チャンに何か用?」
「徹先輩って……っ! 好きな人居るんですか!?」
佳子ちゃんはいきなりすごい剣幕で問い掛けてきた。
(こういうのを烈火のこと如しっていうのかしら)
でも、徹の好きな人なんて訊いてどうするんだろ。
まぁ──お兄ちゃん関連のことなんだろうな。
アタシは調べあげてある純平のデータを脳内検索する。
あぁ、この間お父さんに好きな人バレちゃってたわね、あの子。
それに徹と遥はいいムードだし──家では落ち込んでるんだろうな。
でも、きっと心配しなくても大丈夫ね。
純平はアタシなんかとは比べものにならないくらい強い人だし、あの子にはちゃんと滑り止め君が居るもの。
アタシの頭には瞬間的に無愛想で愛想笑いの苦手な人が浮かんでいた。
あぁ、あの子、なんて幸せ者なのかしら。
なんて、ひがんでみる。
「お兄さんのことは心配しなくても平気よ」
だって、色んな人に気にかけて貰ってるものね。
アタシがそう言うと、佳子ちゃんは驚いた顔をした。
「えぇ……っ、なんで兄さんに関係してるって分かったんです?」
「情報屋として当然のことよ」
「野々村さんは、分かりませんでした!!」
ライバルの名を出し目を輝かしているその子に、ふんっとドヤ顔なんてしてみる。
野々村に勝ったわよ!
「……で、野々村さんが言ってたんですけど、兄さんって……」
佳子ちゃんは、言いにくそうに言葉を濁した。
そこで、助け船をだす。
「男にもモテる?」
「はい! ……で、フラれたショックで……その……他の男にうつつ抜かさないかとか心配じゃないですか?」
ふむ、そういうこと。
優しい妹が居ていいわね、純平は……
「まぁ、平気でしょ。 だってあの子には守ってくれる人が居るから」
その妹を悲しませちゃダメだぞ、純平。
あ、あと英にも久しぶりに会いに行こうか。
アタシは佳子ちゃんに手を振って屋上を後にした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 102