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洒落たカフェにて
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『英side』
「急に呼びつけちゃってすいませんね、英さん」
俺の前で悠々とあいつは紅茶をすすった。
詫びているはずなのに、こいつが言うと素晴らしく誠意が込もっていなくてイラついてしまう。
「……また分からない問題でもあるのか」
俺が質問しても、星野はすました顔をするばかりだ。
こいつからは、過去何度か呼びつけられている。
その度、勉強を教えたりこいつの悩みを聞いたりしていた。
こいつの悩み、それは俺の弟に好意を抱いていること。
家族からは敬遠され、その恋も全然実りそうにないと星野はいつも苦しそうに語る。
俺はなんのアドバイスも出来ない。
なのに、あいつはいちいち俺を呼びつけるのだ。
それは、きっと……
「俺と徹を重ねてるならやめといた方がいいぞ」
星野の紅茶を飲む手がピクッと止まった。
きっとこいつは、徹の面影のある俺に好意を寄せ始めているのだろう。
こいつの顔を見ていればそれくらい分かる。
けれどそれは俺ではなく、徹の面影に寄せられた好意だ。
こんなに弟は愛されているのかと、少しばかり恨めしくなる。
が、自分の恋が叶わないから似ている人にするなんて、虚しくならないのだろうか。
「思わせぶりな態度取りやがって、俺がその気になったらどうすんだ」
俺は虚しい。
別に男色家なわけではないが、こいつは可愛らしい風貌をしている。
思わせぶりな態度なんぞ取られたら、誰でもクラッとくると思うんだが。
まぁ流石に弟の友達に手は出さない。
「……その気ってどういう意味ですか?」
星野は俺の言葉に少しばかり傷ついたようで、唇を噛んでうつ向いた。
「それ訊くか、普通……なに? 説明して欲しいのか?」
「……いえ、帰ります」
ここでエロ全開トークしたらこいつ引いちゃうかなぁと思いながら、ミルクティーをすすると星野は伝票を持って席を立った。
俺はその手から伝票を奪い取る。
「俺が払うから」
星野は、ペコッとお辞儀をして帰っていった。
俺はふぅ、とため息を吐く。
やっと、あいつを突き放せた。
もう呼び出されることもないだろう。
──あーあ、俺はお前が羨ましいよ……徹
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