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恋愛対象なんかじゃないし……?
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僕はなんとなく、三浦さんに言われた通り屋上へ向かっていた。
ふらりふらり、おぼつかない足取りで階段を上がると、なぜか古びた屋上のドアが開いているのに気がついた。
不意にそのドアの隙間から一瞬屋上の景色が見えた。
声を出してしまいそうになるが、必死で堪える。
でも、物凄い衝撃が心を襲った。
フェンスに寄りかかり、徹が誰かと楽しそうに笑っている。
──これが、大事な用事……?
僕よりも、あの坊主の男の子の方を優先したのか、徹は。
……でも、それも不自然なことじゃない。
だいたい、僕みたいな奴と仲良くしてくれていることが不自然なんだ。
徹は、僕とは違うんだから。
しょうがないんだ。
そう自分に言い聞かせるが、手はぶらりと垂れ下がり唇がわなわなと震えた。
──悔しい。
徹にとって自分が大事ではなかったなんて。
あの人と喋ることのほうが大事なんて、認めたくない。
「でもさ、お前はいつもくっついてる奴いんじゃん?
あいつとは恋仲じゃねぇのか?」
その場から動けないでいる僕の耳に、そんな声が聞こえてきた。
いつもくっついてる奴……僕のことかな。
徹は、どう答えるんだろう。
悪い想像しか浮かんでこなくて、聞きたくないと思った。
けれど、固まったまま足は動いてくれなかった。
「……よく聞かれるけどな……あいつとはただ構い合いしてるだけ。
あいつになんて興味ないし。 まぁ、好きだけど」
一瞬、全てがピタッと止まったようだった。
予想はしていたことなのに。
でも──ショックだ。
この気持ちは、結局心に封じ込めるべきなのだろうか。
やっぱり、考えてみたらおかしい。
男が男を好きになるなんて。
こんな感情を知ってしまった僕が異常なんだ。
でも、嫌だった。
徹の本意を知ることが、あの時僕に言った好きの意味を知ることが。
知ることを拒否して、勝手に傷付いて。
恨む筋合いなんてないけど、少し彼のことが恨めしい。
興味なんてないなら、なんで僕に近付いたんだよ。
なんで笑顔を見せたんだよ。
ブワッと溢れてきた涙で視界がボヤけた。
いつかみたいに拭いてくれる人は、いない。
僕は、またふらりふらりと歩き出した。
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