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悪魔
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『遥side』
「だから、金出せって言ってんだよ!!」
バシーン!!
目の前の不良が、思いきり壁を叩く。
僕がブルブル震えていると、周りを囲んでいる男達が醜く笑った。
「……ご、ごめんなさ……い……!!」
今日は、徹と口をきかなかった。
お弁当も一人で食べたし、放課後だって逃げるように帰ってきた。
でも、こうした方がいい。
自分の気が楽なんだもん。
──でも、その見返りか。
僕は裏露地で、五人程のグループの不良に絡まれていた。
「ごめんなさいじゃねぇだろ? さっさと出せよ」
お金なんて持っていない。
でも、そんな反論をしても通じない相手だということは分かっている。
胸ぐらを掴まれた僕は、ただ震えることしか出来なかった。
……確か、昔もこんなことがあった。
あの時は、どうやって逃げたんだっけ──。
「……ちょっと、その子から手ェ離してくれない?」
僕がくだらないことをふつふつと思い出していると、そんな穏和そうな声が聞こえてきた。
その声の主を見て、驚いたことに不良達が散り散りに逃げていく。
僕はというと、その人を見てへたっと地面に座り込んでしまっている。
心臓のバクバクが収まらない。
頭の中が、疑問で一杯になる。
「……大丈夫、遥?」
その人は、くせのある髪の毛を揺らして僕に手をさし伸べる。
僕はその手は取らずに、慌てて立ち上がる。
「久しぶりだね。 ……会いたかったよ」
懐かしむように目を細めたその人と、目が合わせられない。
『君は、僕の犬なんだよ?』
会いたくなかった。
この、善人の皮を被っている悪魔に。
だから、逃げたのに。
なんで、こんなところで会うの……!?
僕が逃げ腰になるとスッとその人の指が伸びてきて、僕のメガネを外した。
マジマジと顔を見られて、心の中でなんともいえない気持ち悪さが広がっていく。
嫌だ、見るな。
見ないでくれ……
「僕以外に君の醜い顔を見た奴は、いるのかな?」
「……もっと優しい人」
キュッと口角を上げたその人は、僕が言った言葉の意味が分からなかったようだ。
僕は、震え声で言う。
「……聖次君よりも、もっと優しい人が、僕のこと可愛いって言った」
「……ふぅん?」
「だから……っ、僕のことは放っておいてくれないかな……?」
こんなこと言っても、この人が引き下がるわけがない。
寧ろ、もっともっと僕に構うんだ。
それは知っていたけれど、もう嫌だったんだ。
その人は、僕の顎を持ってクイッと自分の方を向かせた。
「嫌だね。 やっと見つけたのに、放してたまるかい。
君も、僕のこと知ってるだろう? 君があの男の子と仲良くしたら、あの男の子にどんな迷惑がかかるか──。
──君は、また血が見たいのかい?」
不気味に笑うその人は、まさに悪魔のようだった。
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