アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
どうしたものか。
-
「なぁ……お前らは、俺になにされたら俺のこと避ける?」
俺がそう訊くと、美咲の口内にあったお茶が俺に向かって飛散してくる。
……黙ってハンカチを差し出してくる純平。
昼休み、案の定遥にはシカトされてしまった。
だけど、それでいつまでもへこんでいられない。
ショックを受けた心をカバーしながらも、久しぶりに純平と美咲と弁当を食べていた。
……で、ちょっと質問してみるとお茶まみれ。
が、美咲はなにごともなかったかの様に身を乗り出している。
「え~っとぉ、なまなましい表現使って表現してもいい!?」
「……却下」
ダメだ、こいつは。
俺はチラッと純平の方を伺う。
純平は、真剣な面持ちで頬杖をつきながら口を開いた。
「……う~ん……俺だったら……俺が、徹にとって邪魔なようなら関わるのやめにする、かなぁ……?」
そんな発言に、美咲が白米を食べながら反撃する。
空を舞うご飯粒が、俺の顔に張り付く。
「あっらぁー、塩らしいわねぇ……普通好きならなんとしてでもこっち見てもらいたいって思うのが普通でしょー」
「美咲に言われたくないなぁー?」
軽く口角を上げ、純平はお茶をすする。
いまいち会話についていけない俺は、必死に弁当を消費する。
「俺は、ネチネチした性格じゃないの。今だって、ちゃんと二人のことは応援してるし? 最善は尽くすつもりだし。
もう、手に入らないことは分かってるもんね」
「……ヤケクソ?」
「ヤケクソじゃないよ、もうすっぱり諦めたの。
もう、ただのお友達」
美咲は、それを聞いてケラケラと笑った。
そして、さりげなく俺の弁当に手を伸ばして唐揚げを奪っていく。
その手を叩くが、時既に遅し。
最後の一個だった唐揚げは綺麗さっぱり消えてしまった。
俺ははぁ、とため息をついて席を立つ。
行き先を聞いてくる二人に、軽く手を上げる。
「……ちょっと花摘んでくるだけだ」
遥に会えないかなぁ、なんて考えながら。
*
「あーあ、可笑しいわね。 アタシ、純チャンが泣くことになるなんて予想もしてなかったわ。 こりゃあ、下手したら五人全員失恋するわね」
俺の隣に腰かけている女が、肩を震わせながらスマートフォンをいじった。
まったく、最初会った時から全然変わってない。
「……君と居ると反吐出ちゃいそう」
「随分な嫌われようね」
ふと、美咲のさっきの発言を思い返してみる。
『五人全員失恋するわね』。
……そのうち四人はパッと頭に思い浮かぶのだが──。
「……残りの一人って……」
ボソッと言った独り言も絶対に聞き逃さない美咲は、肩を竦めた。
「自分で見当つけたら?」
それから、スマートフォンの画面を見てあっと声を出す。
何事かと画面を覗き込もうとすると、キッと睨まれる。
ムッとした顔をしてみると、美咲はポツリと言った。
「……朱桔梗ってしってるかしら」
俺は頷く。
……確か、親父が追っかけてたヤクザグループじゃなかっただろうか。
「その幹部の息子、十六夜 聖次。 どんなに非道なことだってなんの迷いもなくやっちゃう問題児」
美咲は、画面を見たままポツポツ言葉を紡ぐ。
「……けれど、そいつの一番怖い所は善人のフリを出来ることなのよねぇ~」
「どういうこと?」
「厄介なことになったわよ」
そんな言葉とは裏腹に、美咲は一つ大きな欠伸をした。
「後で説明するわね」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 102