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割りきれない方々
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『悠side』
平日の昼下がり。
私は、うーんと伸びをしてから携帯と睨めっこを始める。
殆ど間を開けずに来るメールを、一つ一つチェックしていい情報と役に立たない情報とで分けていく。
私は今、全力で朱桔梗のことを探っていた。
弟がこれに絡んでいるせいもあるけど、やっぱり一番の動機は──。
目を瞑ると、また嫌な思い出がフラッシュバックしてしまう。
よし、集中集中。
また液晶と向かい合うと後ろから、
「なぁ──」
という声が聞こえる。
あぁ、英だ。
どうせたいした用じゃないだろう。
んー、と気のない返事を返しておく。
「……姉さん、なんでそんなムキになってんの」
英ははぁ、とため息を付いてから私の正面に座った。
まったく、なんでこんなこと質問するんだか。
ほんっと無神経。
「察して?」
「まだ、あの男に期待してんのかよ」
「…………英だって、最近純平君と会ってないね。 相談に乗ってあげないの?」
英はムッとしてなにか言おうとするが、すぐにだんまりした。
こうなると埒が明かないのを知っているからだろう。
しかし、わりとすぐに口を開いた。
「……俺、あの……名前、なんていったっけ……」
「聖次」
「聖次の気持ちも分からなくはないな……」
へぇ、と目を丸くする。
こいつがこんなこと言い出すとは思っていなかった。
独占したいとか、そういうのは無縁な奴だと思っていたのに。
「……なんてな。 本当は割りきらないといけないんだけど……」
「なんで?」
私は首をかしげる。
こいつが諦める理由なんて見つからないのに。
さっさと付き合っちゃえばいいのになー。
まぁ、英にとっては男に恋するなんて抵抗しかないんだろう。
「……年下に手ぇ出すとか……格好悪いだろ。 それだけ! 姉さんには関係ないだろ!」
「へー、その子年下なの」
わざと気が付いてないフリをしてみる。
「……まぁ、な」
「徹のお友達とか?」
ニヤリと笑ってみせると、クッションが顔面に飛んでくる。
へぶっと妙な声が出た。
「カッ、関係ないだろ!? 姉さんには!! お、俺はただ姉さんがムキになってるんじゃないかって思っただけで!」
英は、顔を真っ赤にして喚きちらす。
分かりやすい奴。
「……ホント、あんたって徹によく似てるわ」
いや、徹が英に似たのか。
「そうだろうな」
英はすぐに腰を浮かす。
「じゃ、俺行くから」
私は再び液晶と向かい合う。
そして、目を閉じてあの人のことを思い出してみる。
サヨナラもなにも言わずに去っていったあの人を。
……今度、誤解したままなのであろう聖次と会ってみよう。
それであの時のことを話してみよう。
そうしたら少しは事態が好転するかも。
そんな甘い考えを頭に浮かべながら、私はパソコンの画面に目を落とす。
なにか起きてからでは遅いと、分かっていたはずなのに。
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