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存分にこきつかえ。
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「……遥、違うよ、ここはこう繋げるの」
……イラッ
「えー……そうなの……?」
……イライラッ
隣の二人組から聞こえる、楽しげな声。
気が散って気が散ってしょうがない。
さっきもトンカチで指を挟んでしまった。
今は、午後の授業返上で教室をメイド喫茶に改造している。
俺はトントンカンカンとファンシーな看板を作っていた。
女子の怒号、男子がすすり泣く声、さっきまでは色々な声が響いていたが今は皆黙々と作業を続けている。
……が、机を組み立てる遥と十六夜の小さな声が気になって気になって集中出来ない。
(……まぁ、料理の下準備をする女子軍のほうが数百倍煩いのだが)
「おーい、一旦集合だよ!!」
ガンガンと乱暴にトンカチを振り下ろしていると、女子軍が俺達男子に集まるよう号令をかけた。
女子軍がパッとメイド服を出すと、途端にげんなりする俺達。
メイド役ではない純平は、俺を見てニヤッと笑う。
こんちくしょう!
「さて、接客練習でもしましょうかね? もちろん、これを着──」
「ねぇ、待ってくださーい!」
有無を言わさぬ女子の口調に皆縮こまっていると、その言葉を遮る強者が現れた。
ピシッと手を上げた、十六夜だ。
「……遥もあの、くぅーっだらないコスプレするの?
やめさせてよ」
十六夜がそう言うと、クラス全体の目線が遥に集まった。
気の毒な程に青い顔をして十六夜の後ろに隠れる遥。
俺が目配せすると、女子の中の真ん中辺りにいた美咲が
「遥チャンのこと見ないで!!」
と声を張り上げる。
そして、すぐに十六夜の隣に移動して睨みをきかせる。
「新入りのアンタは知らないかもしれないけど、メイド役の男子はくじで決められたの!!
仕方ないでしょうよ!! それと、メイド服のことをくぅーっだらないとは何だ!! お前はメイド服の良さを知らないのかーっ!!」
「……うるさいよ」
「……ゴメン」
イマイチ関係のないことで騒ぎ出した美咲は、近くにいた純平によってねじ伏せられる。
十六夜はというと、相変わらずしれーっとした顔のまま。
「……煩いお嬢さん、あのさ、遥にメイド服が似合うと思ってるの? 遥があんな服喜んで着ると思ってるの? ダメでしょ、無理強いしちゃあ」
しーんと静まりかえった教室。
美咲を見ると、なにを言うか決めかねている様子だ。
代わりに、純平がニッコリ笑う。
「仕方ないね。 じゃあ、遥君はメイド役から外そうか」
途端に起こる、ブーイングの嵐。
不公平じゃないか!!メイド役の男子達がそう叫んでいる。
「だけど!!」
純平はそれを鎮める。
「それじゃメイド役が一人減るでしょ?」
そして、十六夜に向かって挑戦的な笑みを(純平ファンの女子から見ると、『ミステリアスで格好良い笑み』)を浮かべる。
「だったら、十六夜君がメイド服着ればいいんだよ」
「賛成!!」
美咲が手を上げると、皆も次々賛成と叫ぶ。
十六夜は、予想外の事態に驚いているようだった。
「サイズは多分合うと思うの。 一回着てみてくれない?」
女子がメイド服をむんずと押し付ける。
「だって、メイドが一人いないとお店が成り立たないんだもん。 お願いよ」
「……えっ……」
口をパクパクさせる十六夜に、ちょっと前の出来事がデジャブする。
ちょっと可哀想じゃないか、これは。
自然と体が動く。
マズイ、と思った時にはもう既に美咲と純平と向き合う形で立っていた。
「……徹チャン?」
「……徹?」
いきなり乱入した俺は皆の視線をたっぷりと浴びる。
「えー………っと、新入りにこんな仕打ちはちょいと酷くねぇかなーって……思ったんだけど……それだけ……えっと、俺が二人分頑張るからってことで……」
「えぇっ!? ……いいの!?」
冷や汗タラタラでしどろもどろ。
そんな俺の言葉に、思いきり眉をひそめる美咲。
「……まぁ……徹チャンがいいならそれでいいんだけど、ね? こきつかうわよー?」
パンパン、と純平が手を叩く。
「解散!!」
十六夜が、俺のことをじっと見ていた。
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