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首が痛い。
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皆がそれぞれの作業に戻った頃、またガンガンとトンカチを振り回す俺は、隣に人の気配を感じた。
振り向くと、こっちに向かってニッコリ笑う十六夜がいた。
スルーして作業に戻ろうとすると、しなやかな手が俺の頭を掴む。
そして、無理矢理十六夜の方を振り向かされた。
ゴキィーッと妙な音を立てる俺の首。
「ね、無視しないでね?」
美咲や純平のものとはまた違う迫力に、頷かざるをえなかった。
その瞬間パッと解放されて、ズキズキ痛む首をさすりながら十六夜と目を合わせる。
「ねぇねぇ、どういうつもりなの?」
「……なにがだ」
「僕に恩着せても、どうにもならないんだよ?」
あぁ、こいつはさっきのメイド騒ぎのことを言っているのか。
俺は気恥ずかしくなって、頬が熱を帯びていく。
「あれは……ただ正直なところを言っただけで……」
「へぇぇ? そんなにメイドさんがやりたいんだ?」
からかうような口調に、俺は狼狽えた。
「そ、そんなわけじゃ──」
「冗談だよ。 まぁ、ありがとって言いにきただけだし」
十六夜はそう言うと、さっさと教室の隅っこの遥の元に帰っていった。
なんだったんだ、あれは。
はぁ、と息をつく間もなく今度は、
「あ、徹チャン!!」
と少し不機嫌そうなキンキン声が聞こえてくる。
例によってスルーすると、グイグイ手を引っ張られる。
仕方がない、と振り向くと口をへの字にした美咲の顔が近くにあった。
ちょっと来なさいと言われ、廊下に引きずり出される。
「……なんの用だ」
「アンタねぇ、お人好し過ぎんのよこのバカが!! 合法的に強気な攻めが照れてる所を見られる機会だったのよ!? ねぇ、分かってんの!? このままじゃ、遥チャンのこと盗られるわよ!?」
無駄にハイテンションに捲し立てられ、耳がキーンとする。
そんな美咲は急にハッとしたようにおし黙る。
「……そういえばアンタね、あんまりお姉さんに頼っちゃダメよ?」
「えっ、なんでだ?」
「なんでも!! 悠さんには悠さんの事情があるのよ!!」
美咲はそれだけ言うと、教室に戻ってしまった。
いよいよ明日は、学園祭だ。
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