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ボッチだからな。
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『──えー、テステス。 よし、皆聞こえてるかー!
これから学園祭が始まります! 皆さん、楽しみながら、実のある学園祭にしましょう!』
朝の八時半、学園祭の開幕を告げる放送が鳴り響く。
もうスッカリ慣れてしまった(悲しいことに、な)メイド服が型崩れしていないかメイド同士で確認。
俺達はもう、プライドを捨てる覚悟を決めた。
「皆可愛いから、頑張ってね~」
お洒落な私服でビシッと決めている純平が、またからかうように俺達に話しかけた。
可愛い、と言われて嬉しがる若干名の他は、殺気立つ。
「……あ、そうだ。 徹、一緒に回れなくてゴメンね~」
殺気立った俺の頭をくしゃくしゃと撫でて、純平は目を細める。
こいつは、俺と休憩時間がズレている為一緒に出店を回れないのだ。
「いいよ、約束も絶対じゃないし。 俺はボッチで回るからさ」
「……はぁ、じゃあお兄さんと一緒に回ればいいんじゃない? 俺もお兄さんと一緒に回るんだよね」
「ぜってぇヤダ」
兄さんにこの格好を見られるなんて最悪だ。
絶対に嫌だ。
と、純平の言葉になにか引っ掛かるものがあった。
「あれ、お前兄さんと仲良いんだっけか?」
「……あ、もう開店だ。 じゃ、またね」
逃げるように厨房に入った純平の背中を見つめる。
そんなに仲良しだったんだな、兄さんとあいつ。
俺がボーッとしていると、
「こんにちはーっ!」
勢いよく教室の戸が開き、雪崩れ込んでくる人、人、人。
意外にもその中には女子が多く、俺達が慌てて接客を始めるとキャーキャー騒ぎ立てる。
正直こんなに人が多いとは予想していなかった(……だって考えてもみろ、男がメイドする喫茶店とか死んでも行きたくないだろ?)ので、怯んでおろおろしてしまう。
「きゃぁぁ、可愛いー!」
「写真撮らせてー!」
最終的には女達に囲まれる始末。
他の奴らを見ると、たどたどしいながらもきちんと仕事をこなしている。
こんな所で動けなくなっているのは俺だけだ──。
情けない。
「え……っと、お嬢様……お席にお着きください……」
しどろもどろで絞り出す言葉も逆効果。
可愛い可愛いと騒がれて、神経がすり減っていく。
どうしようどうしよう。
完全に邪魔になってる。
かといって、助けてくれるような人もいない。
皆自分の役割をこなすのに精一杯だからだ。
「……お嬢様方、皆様の邪魔になりますので一旦席にお着きください」
と、凛とした良く通る声が響いた。
思わず、えぇっと声を漏らした。
群がる女子達をばっさばっさ切り捨て席へ案内しているのは、バッチリメイド姿の十六夜だったからだ。
「なに見てるの、早く接客してくれないかな」
ボーッと見ていると、そんな渇を飛ばされる。
弾かれるように動きだし、接客を始める。
やっと客が少なくなってきて、少し喋る余裕も出てきた。
出店を回っていた生徒も帰ってきて、ホッと一息つく。
やっと休憩だ。
俺は、十六夜に話しかける。
「……あ、十六夜」
「お礼ならいらない」
「え、でも……」
「僕はなにもしてないし、もともとメイドやる予定だったじゃない。
あ、僕まだ休憩じゃないから、じゃあね」
ツンとした態度に、ムカッとくるがまぁ気にしないでおこう。
で、一つ問題が──。
「……誰と回ろう……」
俺は立ち尽くす。
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