アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
頬に衝撃。
-
「……る………おる……と……る……」
──誰かの声が聞こえる。
俺の名前を呼んでるのか……?
なんでだろう……
「起きろ徹!!」
「うぎゃぁっ!!」
「み、三浦さん……!?」
バッシーンと頬に走る衝撃に、俺は悲鳴を上げて飛び起きる。
そんな俺のことを鬼のような形相で睨んでいる美咲と、心配そうな目をしてこっちを見ている遥が目に入る。
息を吸うと薬品の臭い、見上げると白い天井。
どうやら俺は、保健室のベッドで眠っていたようだ。
「……あ、あれ……俺……なにしてたんだっけ……」
思い出そうとすると、頭が痛くなる。
えっと、休憩時間にボッチで……それで……呑みもの屋に……?
美咲はオーバーにため息をつく。
「はぁ……甘酒で酔っ払ったの。 大変だったのよ、なんか男の人がアンタを担いできてさー……腐女子は沸くわ、アンタは重いし!」
「……男の人」
「誓さんっていってね、結構イケメンだったわ。 あ、もうどこかに行っちゃったけど。アンタに『伝言宜しく』って言ってた。 なんか約束でもしたの?」
「……伝言」
そういえば……何か言われたような気がする。
ヤバ……覚えてねぇ……
「まぁ、心当たりないようならいいけど。
あぁ、そういえば遥チャンがね、どうしても心配だっていうんでついててくれたのよ」
「……え?」
美咲は、次々と話題を変えていく。
外はもう茜色に染まっていて、学園祭ももう終わっているようだ。
それなのに、ずっと……?
俺が聞き返すと、遥はブルブル首を振った。
「……ぇ……そ、そういうんじゃな……」
「他言無用」
美咲がキッパリ切り捨てると、遥は下を向いて唇を噛む。
「……ホントだもん……聖次が片付けで忙しいから……それだけなんです……!」
「はぁ……やってらんないわね……」
俺と同じようにメイド姿の美咲は、腰を浮かせる。
「アタシ、着替えてくるからね。
二人っきりなんだから……さ、当たり障りのないことでもやってれば」
バタンと保健室の戸が閉まって、二人っきりになってしまった。
不自然な沈黙、背中に伝う冷や汗。
なっ、なにか話さなければ……!
こんなこと、滅多にないのに……!
「……あ、のさ……ありがと、な」
「……い、いえ……ホントに……ついでですし……だって徹のことなんてどうだっていいし……ホントです、どうだっていいんですから……!」
「いや、それでもついててくれてたのはありがたいから」
自分に言い聞かせるようにブツブツ言っている遥の頭に、ポンと手を置く。
「……ありがと」
「……………はい」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
70 / 102