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忙しい。
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「あ……俺大丈夫だから。 お前は……アイツと帰れば?」
「……は……い……?」
俺はベッドからおりながら、つい、強がってそんなことを言う。
遥は曖昧に頷いてから、小さな声で言った。
「……で、でも……外までは行きます……!」
そんな遥と一緒に、俺は茜色に染まる廊下に出た。
すると、偶然かずっと待っていたのかは知らないが、窓際で外を眺めていた姉さんがこっちを向いて微笑んだ。
「あっ、徹、遥」
「……げっ」
「げっとはなんだ」
妙な声を出して姉さんに睨まれる俺と、軽く会釈をして撫でられている遥。
姉さんは皮肉を込めてニタァーッと笑った。
近くにいた遥が怯えてしまっている。
「メイド姿似合ってるね、徹」
俺は遥を近くに引き寄せ、腕の中に入れてから言い返す。
「姉さんには似合わないだろうなァ?」
「言ったね!?」
姉さんは髪をかき上げて地団駄を踏んだ。
と、その時その耳元のピアスがキラリと光った。
歪な星形のピアスで、なにか閃くものがあった。
「……あっ、伝言!!」
「「……伝言……?」」
遥と姉さんは、俺の顔をジッと見つめてくる。
思い出した。
呑みもの屋の、あの黒髪の男の人の伝言。
早く伝えなくちゃ!
「チカが……期待しなくていいって言ってた……と、思う」
「チカと会ったの」
「え、うん……チカ。 倉庫で呑みもの屋してた」
「ゴメン徹、私行かなきゃ……!!」
姉さんはそう言ってから、廊下を走っていってしまった。
……相変わらず忙しい姉を持ったものだ。
「あの……徹?」
呆然と立ち尽くす俺に、遥が上目使いで話しかけてきた。
ん?と訊き返し、思わず遥の髪の毛を触った。
「……離してくれると……ありがたい……んですけど……」
その言葉に、ハッとする。
俺は遥を抱き寄せたままだった。
「……ご、ゴメン……」
「あ……謝らなくても……いいんですけど……!」
慌てて離れると、遥はゴニョゴニョとなにかを言いながら頭をブンブン振った。
その顔が紅く見えるのは、きっと夕陽のせいだな。
「おーい、遥~」
「……聖次だ。 行きますね」
どこからともなく聞こえた声に、遥はペコッとお辞儀をして駆け出した。
え……俺、一人……!?
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