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後悔とババアと罵声と心配
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『悠side』
「……じゃ、私行くわ」
私は徹に手を振った。
心配そうな顔をした徹は、
「くれぐれもリンチには気をつけて」
と手を振り返す。
冗談か本気か分からない返答に思わず苦笑。
こいつ、真顔で冗談言うんだよな……
冷たい病室のドアを後ろ手で閉めて、ふぅーっと息をついた。
もうすっかり紅く染まった空を眺めると、気にするなと笑ってくれた、あいつの顔がフラッシュバック。
溢れそうになった涙を引っ込ませて、そそくさと歩き出す。
早く帰らないとね。
私は高校生の頃……うん、丁度徹と同い年の頃だ。
何故かヤクザと付き合っていた。
最初は大嫌いな奴だったけど、いつの間にか大好きになっていて。
幸せだった、とても。
それなのに……
『アンタのせい……アンタのせいでチカは居なくなったんだ!!』
あいつは居なくなった。
微妙な亀裂が走っていた聖次と私を残して。
私はその亀裂を無理矢理拡げ、自分勝手に泣いた。
そして、あの子との関係を放って私は独り暮らしを始めた。
……今は家にいるけれど。
なんで帰ってきたんだろうと、少しだけ後悔してしまう。
帰ってこなければこんなことにはならなかった!
でも、徹が遥に惚れるのは避けられないことだし、遥が聖次と関わるのも必然だ。
仕方ない、かな……
気が重くなり、グッと拳を握りしめる。
私が、頑張らなくちゃ……!
それが罪滅ぼしになるのかは分からないが、なにか行動を起こさないととてもじゃないが気が滅入りそうだ。
「……な、なんだあれ……」
そんな決意も虚しく、私は早速立ちすくんでいた。
家の前に、見知らぬババアが立っていた。
そのババアは、玄関の外で目を吊り上げ、留守番を頼んだ英になにか喚いている。
英はただ頭を下げるばかりだ。
何事かと私は恐る恐る近付いた。
「うちの遥が居なくなりました! お宅の男の子がなにか知っているんじゃないですか!?」
「い、いや……徹は……」
その会話で色んなことを察した。
このババアは遥の母かなにかだろう。
で、遥が居なくなったんで慌てていると。
それで、徹がなにかしたと疑っているのだ。
「……すみません、徹は少し事情がありまして入院していてですね……
今日はもう暗いですし、お引き取り願います」
私が口を挟むと、どもっていた英が明らかにホッとする。
ババアは、
「でも、私心配なんです!」
とヒステリックな声を上げる。
心配性なババアだ。
まぁ、今回はちょっとばかりあの子の身も危ないかもしれないけど……
この人に伝えたらどうなるか分かったもんじゃないな、うん。
「お引き取り願います」
あぁもう、ヒステリックになりたいのはこっちの方だ!
やっと立ち退いたババアに、私は苛立ちを隠せなかった。
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