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【バレンタイン番外編】 illuminations
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2月14日、俗にいうバレンタインというチョコテロの日。
俺は、女子から貰ってしまったチョコの山の前で伸びをする。
今年もこの量のチョコ処理するのか、と思うと気が重くなるが仕方ないだろう。
……だって俺、モテちゃうしぃ?
モテ男がチョコの処理に困るのなんて世の常識、ありがちなパターン、モテの極み。
──まぁ、そんなに嬉しくはないんですよ。
上っ面だけで人を判断する女子達のチョコなんて投げ捨てたいし。
けど、チョコに罪はないし。
……本当は、自分のことをよく知っている人からのチョコが一番嬉しいんだけどな。
*
高校一年生の頃の冬、塾の帰り。
何故か少し早く終われて、時計は八時位をさしていた。
眠いから早く帰ろう──!!
キンキンに冷えた空気をいっぱいに吸って、そう決意する。
早く帰って、煮込みうどんでも食べよう!
うん!
口から白い息を吐き出し、足早に駅へ向かう。
が、目の前に広がった景色にふと足を止めてしまう。
俺の目に広がったのは、イルミネーションの海。
賑やかな商店街、カップルの溜まり場。
……そっか、今日バレンタインなんだ。
いつも以上に溢れているカップルに、思わず目を細める。
幸せそうで結構なこと。
なぜか、その中に飛び込んでいた。
人混みは嫌いだ。
それなのに、自分からイルミネーションの海に飛び込んだ。
「……っはぁ……」
……案の定、すぐに人酔いしてベンチに座り込んだが。
時計を見ると、八時半になろうとしている。
折角早く帰れそうだったのに、残念なことをした。
こんなことで三十分もロス。
俺のバカ、なにやってんだぁぁぁ……
ぐったりと項垂れていると、ピトっとなにか冷たいもの……誰かの手が目にあてがわれた。
「誰だと思う」
視界が真っ暗になったのと、その手があんまりにも冷たいのに驚いて悲鳴を上げそうになるが、これがよく女がする『だーれだ♪』というやつなのだと理解し、必死に堪える。
今聞こえたぶっきらぼうな声で、目隠ししている人物はあらかた予想がつく。
でも──。
折角、だーれだ♪なんて可愛いことしてるのに、そんなぶっきらぼうな声出しちゃうかなぁ……
ミスマッチだよ、もの凄く。
「おい、早く答えろよ」
ククッと喉元で押し殺した笑い声が聞こえてしまっていたのか、ちょっと拗ねたような声が聞こえてくる。
「徹、でしょ?」
「……正解」
パッと手が離れ、後ろを向くと紙袋を持った徹がいた。
ふふ、目隠ししちゃうなんて可愛い奴め。
「おい、なに笑ってんだ! これは……あれだ、たまたま近く通ったから話しかけたというか……なんつーか……」
しばらくごちゃごちゃ言っていた徹は、手に持っていた紙袋をこっちに押しつけてくる。
「これ……姉さんに渡せっていわれた……!!!!」
「えっ、なにこれ」
「いいから受け取ってろ!! しゃーねーだろ、だって姉さんが……!!」
そう押しつけられた紙袋。
その中身は──。
「……チョコ?」
チョコレート。
*
さーって、問題はチョコをどう処理するかです。
しばらく考えた末、ある番号に電話を掛ける。
わりとすぐに繋がる電話。
「──あ、英さん? ちょっと来られます?」
_fin_
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