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癖
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口癖。
手癖。
足癖。
酒癖。
寝癖。
色んな癖がありますが
ついつい…とか
いつの間にか…ってのが、厄介なんですよね。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
寒くなるとつい、ポケットに手を入れる。
―よく注意されたっけ。
なんて、思い出しながら、電話の画面で時間を確認した。
―あ。トイレ。
そういや、休憩ん時も、行きそびれたんだっけ?
駅へ行きかけた足を、今出てきたショッピングモールへと戻した。
その時。
「わっ!!」
後ろから、誰かが大声を上げて抱き着いてきた。
「おまたせ~♪」
回り込んできた上機嫌のソイツは、見たことの無い顔を最大級に弛ませて、オレの手を取ろうとした。
「あれっ!?」
目と目が合った瞬間、メガネの奥の瞳が真ん丸になった。
「ご!ごめんなさい!!間違えましたっ!」
ガバッ!
勢いよく頭を下げたソイツは、アニメだったら、ピューッて効果音がしそうな速さで、どこかへ逃げてった。
「ぷっ!」
思わず、笑った。
でも、本人もう居ないし。
1人でクスクス笑うとか、なんかヤバい人みたいじゃん。
てゆーか、あんな人違い、しょっちゅうやってんだったら、メガネ変えた方がいいんじゃないかな?
―あ。
まただ。
要らぬお節介。
『他人の世話より、自分の用事が先!!』
今朝のマネージャーの小言を思い出し、足を早める。
「あーぁ。」
トイレでため息。
コレも最近癖になってきたな…。
サッと隣に並んできたリーマンを見ないようにして
手を洗って外へ出た。
「あ。そこの人、ハンカチ忘れとるで。」
「あっ、すみません!」
―あ。
「こういう時は、アリガトウ、言うもんやろ?」
笑いながら注意された。
「ごめんなさい。」
「あんたのソレ、口癖になってるっぽいな。どっかの店員さん?」
ニッと笑った顔がひどく人懐こい。
「あー、まぁそんなとこです。」
なるべく顔を見ずに、曖昧に笑った。
「ほんなら、ちょっとこの辺案内してくれへん?俺、さっきここに着いたばっかで、腹ペコやねん。どっか旨い飯食えるとこ教えてぇな。なっ?」
「嫌です。」
完全拒否の構えで、駅を目指す。
「おい、待てや!」
追ってきたリーマンの手を避けて、オレは歩き出した。
―だって。
あの人、ああいう風にしてナンパすんのが癖っぽかったし。
つい流されて痛い目みるの、オレもうやだし…。
「なあ。マジで案内してくれるだけでええからさー。」
「しつこいな!ついて来ないで下さい!!」
「この帽子、返して欲しかったら、言うこときいて。」
―あ。
オレは自分の頭に触れてみた。
「いつの間に!?」
手癖悪っ!!
「さっき、謝った時にアンタ頭下げはって。そん時落ちそうなってん。」
パフン
頭に優しい感触。
「ほなな。急いどるとこ、邪魔して悪かったわ。」
バイバイとオレに向かって手を降りながら、後ろへ進む。
危なっかしいな、関西人。
「後ろ向いたまま歩くと転びますよ?足元氷だし。」
「マジで!?」
「そこを出て、大きな通りを真っ直ぐ行ったら、メッチャ美味しいお店があります。それじゃ。」
うわ!寒っ!!
なんて声をあげてる人と反対側へ歩き出した。
「そこ、なんて店!?ジャンルは?」
「SABURO。ジャンルはよく解らないけど、あったかい系?」
相手につられて、大声で言い返す。
「おおきに!!」
「どういたしまして!!」
学校帰りの小学生みたいに、声を張り合って、手を振って別れた。
あいたっ!
なんて声がしたけど。
オレはもう振り返らなかった。
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