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環
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映画を観に行こう!で思い出してしまった。
かつて、わざわざ映画を観に行こう!と自分から誘って来たくせに
最初から最後まで
私の隣で爆睡しまくっていた人がいたことを。
その人は、ひとつ上の先輩だった。
真冬の待ち合わせに、3時間半遅れてきた。
いつもいつも、カルピスソーダだの、ミルクティーだの、バター飴だの
必ず乳成分を含む食品を手渡された。
生まれて初めて他人から貴金属を貰ったのも、この人からだった。
それも、学校の廊下でだった。
「明日、誕生日だろ?」
意味ありげに取り出された、如何にもソレですよ、と言わんばかりの小さな箱。
「開けてみて」
ウギャー!やっぱりだ!!
「うっ!!受け取れません!」
まだ異性と話すくらいが精一杯だった私は戦いた。
だって、指環って!=コン・ヤク!?
いやいやいや
私がケッコン?
そんな想定外の状況は、核戦争後でもなければ、有り得な~い!
「じゃあ。焼却炉にでも捨ててくるか。」
「えっ!?」
一応、じゅうはちきんである。
しかも、小さいとはいえ石が幾つが嵌まっていてキラキラしている。
「こんなのどこで?」
きけば、このために夏中せっせとバイトしたんだと事もなげに言う。
―ソレを焼却炉に!?
貧乏性の私はビックリした。
「莉緒が貰ってくれないなら、置いとく意味がないからさ。」
「…お、お姉さんにでも、あげて下さい。」
(先輩にはたしか7つ上のお姉さんがいらした)
「却下。じゃあ、そういうことで。」
「えええっ!?ちょっと、待って!!そういうって、ど、ど、どう…」
「だから。要らなきゃ、捨てて良いって。」
結局、そのまま、贈り主は帰ってしまった。
見てみれば、石はルビーっぽい。
そして先輩は、夏生まれであった。
えっ!?
誕生石って、指環を持つ人の石じゃないの?
目測でも無理なのは判ったが、腐ってはいても、一応は女子である。
果てしない冒険へ旅立つ勇気も、世界を統べる気も、さらさら無かったが、取り敢えず、はめてみた。
ん?
あららららら。
小指にしか、はまらないが、小指には大きすぎる…
色々ザンネン!!
思えば、それなりに楽しい会話があった。
何かと世話を焼いてくれた。
毎日図書室に来ては、貸し出しカウンター越しに色々と聞かれた。
一番ギョッとしたのは、家庭科で焼いた小麦グルテンの塊を何としても食べたい!!と熱望されたことだった。
先輩は家庭科室の隣の教室だ。
しかも実習はお昼直前
そりゃあニオイだけは、クッキーと変わらないものが漂っただろう。
だろうけれども。
作った本人が万が一にも旨くなんかない!と言い切るブツを強引に口にして
その結果、激しく噎せていた。
見かねた友達が、手洗い場へ連行して水を飲ませたようだった。
実は、ずっと違和感を感じていた。
何なのだろう?この幻想ガッツリな感じは。
女といえば、髪が長くて、スカートはいてて、か弱いから、男が守るものである!!
いやいや
先輩、あなた自分も守れてないような…
誰が何と言っても、相手の暑苦しさと志向は変わらない。
逆に変な誤解を生むだけのような気がしたので、私は何も言わずに、当たらず触らずで済ませていた。
それを、はぐらかされている、と感じたのか
『俺はおまえの何なんだ!?』
いきなり詰め寄られた。
相手が私の何になりたいのかは、明白だったが、ソコは絶対無理だったので、ハッキリ言った。
『Iさんは私の先輩です。』
悪い人じゃなかったと思う。
ただ、思春期特有の
『好きだ!!だから最期まで添い遂げる!』的な熱にうかされていた。
そこに大学受験のプレッシャーだの、年下のライバルに私を取られる!?だの、変に考え過ぎて、勝手にテンパっていた。
それだけだと思う。
ところで。
SNSで『○○じぃ』と名乗っているのは、一体どういうわけだろうか?
―まあ、どうでもいいけど。
卑屈になるのだけは、一人前だったっけな…、とか
未だにそんな風に思わせるあたりが、やっぱり無理だし、腹立たしいな、なんて
もう一生会わないと思うから、本人に言うことも無い。
相変わらずなのは、あの人だけでもないか…なんて思った朝。
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