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攻
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私が昔付き合っていた人は、お父さんと実家に2人暮らしで
一度に5合炊いたご飯を、スーパーの値引きされた惣菜をオカズに、何日間も食べる、みたいな食事を10代後半からずっとしていた。
服はどれも黒。
衣替えもしないで、冬になったら、ただ上着だけ、ぶ厚い物を着ていた。
仕事以外ほぼ家から出ない。
だから、どこに何があるのか、市内の地理もよく知らなかった。
そんな人が何だかとても気になって
自分から、アプローチして付き合うことにした。
毎回、色々提案しては実行に移した。
アレを食べよう!
アソコへ行ってみよう!
コレ着てみたら?
季節ごとに、アチコチ連れ出して、食べさせたり、遊んだり
ある夜。
仕事終わりの彼を車に乗せ、何も知らせないまま、蛍の生息地まで走った。
いわゆるサプライズである。
雨の降りそうな、湿度の高い夕べ。
どんどん人気のない方に走ってゆく車。
黙ったまま運転し続ける私。
「着いたで。行こう。」
思いっきり不審そうな顔つきになった人を促して、駐車場からライトもつけずに手を繋いで、少し歩いた。
『うわぁ…なんやこれ!?スゴい、キレイやなぁ。』
生まれて初めてみる光景に、歓声をあげた。
目を輝かせ、口を開けたまま、そちこちと蛍を指さし、嬉々として歩きまわる彼の姿は、とても微笑ましかった。
同時に、ああ、なんだか男女逆だな…と思った。
でも、なんだかえらく愉しいから、良いか。
それまで感じたことのない位、興奮したことを、今でもハッキリ覚えている。
―そうか!
オレって、攻めだったのか!?
なんて思って、その後もアレコレと世話を焼きまくって
いつしか、それが当然みたいに思われてしまい…
『たまにはオマエも何かしろよな!』と私がキレたところ
『何処かへ行ったり、何かを食うのには、カネがかかる。そして、俺にはカネがないし、莉緒が居れば、それで満足だ。つまり、特に何の必要もないので、何かをしようとは思わない。』
そう真顔で言われて、かなりショックを受けた。
ああ、このヒトは自ら望んで箱入りなまま暮らしていたんだな…。
今までずっと私は、自己満足に彼を付き合わせてただけだったんだなぁ
と感じたので、別れることにしましたw。
今もまだ蛍を見ると
あのお家でヒッソリ暮らしているだろう人をチラッと思い出す、という話でした。
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