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暫くして透がトイレから戻ってきた。
再び部屋で二人きりになると何だか気まずい空気が室内に漂う。
そりゃ、当たり前だ。さっきあんなことがあったんだから。
まさか透が男に対して勃つとは…
さっきの俺は女装してないからもう逃げ道はない。透は、ゲイかバイなんだ。
そして、俺のことが………好き?
いやいやいやっ!それはない。ないはずだ。単純に二人でいてムラついてしまっただけだ!透を女に置き換えてみたらその気持ちもわからなくもない。
俺だって女と二人でベッドで寝ていたら変な気も起きるに決まってる。
きっと透だってそんな気持ちだったに違いない。だとしたら、俺はどんなに失礼な奴なんだ。……いいや、知らなかったんだし仕方ない。それに完全に酔っ払ってたわけだし。
これからは気をつけよ。間違ってお酒飲んじゃうとかほんと馬鹿。
………それよりも、透に謝ったほうがいいかな。今回の事件はほとんど俺のせいだし。
さっきから透と目を合わせられなくてずっと俯いてしまっていたが、ゆっくりと顔を上げて下から覗くように恐る恐る透のことを見つめると、その視線に気づいたのか見つめ返された。
透の表情は今にも泣きそうな、本当に不安そうなそんな顔。瞳には涙が溜まっている。
「あの、さ…透」
「…めん」
「え?」
「ごめっんなぁ……」
透は突然泣き始めてそう言った。
顔を真っ赤にして嗚咽を上げてとても苦しそう。
その様子を見ているとまた俺の胸がきゅっと苦しくなって自分まで表情が歪んでしまう。
こんな顔をさせてしまったのは紛れもなく自分なわけで残るのは罪悪感だけ。
しかし、侵されそうになったのも事実で難しい。恐怖心だって全くないわけではない。
でも泣かれるのは辛い。
矛盾してるよな。こんな気持ち。
「泣くなよ」
「ごめん……うっぅ」
「怒ってないから」
「………でも」
「えっと、透はその…男もイケるんだろ?」
「まぁ…」
「そしたら俺が悪かった」
「なんでだよ」
「だって、一緒のベッドで寝るとかそういう気持ちになってもおかしくないじゃん。なのに俺…」
「違うよ、それは間違ってる」
「え?」
「そんな見境なくムラついたりしねーよ」
「だって、でも………」
「はぁ…わかんない?」
「なにが」
「………それは紫音………っ、ごめん、やっぱ何でもない」
「え!?何だよ、気になるだろ!」
「アホっ!この鈍感っ!」
透は俺に優しくデコピンをして笑った。
その鈍感という言葉と笑顔の意味がよくわからなくてモヤモヤとした気持ちは晴れないけれども、とりあえずさっきまでの気まずい感は少しなくなったので安心だ。
俺もなんとなくニコッと微笑んで小さく呟いた。
さっき言えなかったから言いたかった言葉。
「ごめんね」
そう言うと透はズルい!とか言いながら俺の頭をグシャグシャと撫でてまた笑った。
その笑顔は少しはにかんでいて綺麗だ、なんて感じてしまった俺はどうかしているのかもしれない。
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