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3.主人公的帰省-1
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数ヶ月ぶりの実家は、相変わらず何の変哲もなく、母さんによって小綺麗に片づけられていた。
そこここに飾られた装飾品も控えめでセンスが良く、住む人の人柄が伺える。
隆雄はカーテンを締め切ったままのリビングのソファに体を沈み込ませた。
「・・・つかれた・・・」
アパートから実家へは電車を乗り継いで2時間弱。
朝の通勤時間は避けて出発してきたはずなのに、駅構内も、ホームも、車内も、人だらけだった。
思わずスマホをポケットから取り出して曜日を確認してしまった。
平日だ。
間違いない。
何なんだろう。
おまいら暇人か。
人いきれでクラクラする。
あっという間に気持ちが萎えていく。
帰省は諦めようかと本気で考えた。
が、今回は目的があるのだからそういうわけにはいかない。
その程度には自分の置かれた状況に危機感を抱いていた。
アパートの最寄り駅からの1時間は地獄だった。
他人の肌が、体温を感じ取れるほど近くにある。
呼吸の度に、雑多な臭いを吸い込んでしまう。
電車の走行音とは別に、耳障りな雑音が絶え間なく押し寄せてくる。
嫌悪感で具合が悪くなりそうだ。
なるべく体を小さくして、それらの攻撃から防御する。
しかし、その苦行からも二度乗り換えて暫くすると、嘘のように解放された。
単線の列車の車窓には所々緑が流れ、コンクリートの巨大な建物はなりを潜めた。
車内の人は疎らで、何より静かだ。
車輪とレールの継ぎ目でたてる小気味よい音が眠気を誘う。
いつもはまだ布団に丸まっている時間。
完全に夜型の隆雄にしては早起きをしてしまった為に眠くて仕方がない。
隆雄は腕を組むと目を瞑る。
程なくうとうとと船を漕ぎ出した。
目的地の一駅前で目を覚ました隆雄は、駅から歩いて15分程の実家に到着した。
起きた時に涎を垂らしていたことと、乗り過ごしたかと焦って椅子から勢い良く立ち上がってしまったことは忘れようと思う。
合い鍵を探って、無人の家に入り込む。
誰もいない平日の昼間ならば静かに捜し物ができるはずだ。
「・・・・・・さて」
ソファに投げ出していた体をもたげると、リビングを出て直ぐの階段をのろのろと登って行った。
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